研究課題/領域番号 |
16H06256
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
佐野 紘平 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (00546476)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 核医学 / 放射性医薬品 / がん治療 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、治療用ベータ-線放出核種の高い腫瘍集積性と正常組織における不必要な被曝の低減を同時に達成しうる新たな小線源療法および内用療法を確立することにある。つまり、熱をトリガーとして凝集する化合物群を構築し、その放射性標識体について、インビボにおける腫瘍選択的な熱制御により、高い腫瘍集積性及び腫瘍縮小効果の達成を目指す。凝集前の化合物群は比較的速やかな生体クリアランスを示すように設計することにより、副作用の低減に繋がることから、上記に示す目的を達成できるものと考える。平成29年度は以下の結果を得た。 (1)温熱療法との併用療法 温熱療法の適用温度が約42℃であることから、体温では分散状態を保ち、42℃で確実に凝集するポリオキサゾリン誘導体を用いた検討を行った。前年度の検討において、加温により腫瘍集積性が約1.8倍向上することを示したが、今年度は、ポリマーの腫瘍集積性に与える、投与ポリマー量および加温時間の影響について調査し、最適な条件を見出した。また、腫瘍内のポリマーの局在に関して、インビボ共焦点蛍光顕微鏡を用いて評価した結果、加温条件でのみ腫瘍血管の近傍でポリマーが凝集していることを明らかとした。 (2)近赤外光照射による局所発熱を利用した腫瘍特異的治療法 存在部位の不明ながんを対象とした新たながん治療法を確立を目的とする。金ナノロッドに対する光照射により発熱する熱を利用して、ポリオキサゾリン誘導体の腫瘍集積性の向上を目指す。今年度は、金ナノロッドに近赤外レーザー光を照射し、溶液あるいは腫瘍内温度が42℃付近になる条件を見出し、その条件で、ポリオキサゾリン誘導体が凝集することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、ポリオキサゾリンの放射性標識体および蛍光標識体を用いて以下の検討を行った。 (1)放射性標識ポリオキサゾリン誘導体と温熱療法の組合せによる新たな内用療法の開発:凝集温度が約38℃の放射性標識ポリオキサゾリン誘導体を用いて、腫瘍集積性に対する投与ポリマー量および加温時間の影響を評価した結果、ポリマー量は約4nmol、加温時間は1時間が最適な条件であった。また、プローブ型インビボ共焦点蛍光顕微鏡を用いて、蛍光標識ポリオキサゾリン誘導体の腫瘍内局在を観察した結果、非加温時においては大部分のポリマーが血管内に存在していた一方で、加温時にはポリマーの凝集体が観察され、またその多くが血管の近傍に存在していた。 (2)近赤外光照射による局所発熱を利用した腫瘍特異的治療法:金ナノロッドに対して近赤外レーザー光を照射し、その金濃度および光照射強度に応じて温度が変化することを示した。また、金ナノロッドを腫瘍組織内に投与し、近赤外レーザー光を照射することで腫瘍内温度が約42℃となる条件も見出した。 上記の通り、本研究課題は順調に進展していると評価できる。本研究成果は国内学会にて3件報告した。前年度の小線源療法に関する研究成果は論文報告した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、(1)放射性標識ポリオキサゾリン誘導体と温熱療法の組合せによる新たな内用療法の開発について、イットリウム-90標識ポリオキサゾリン誘導体を用いた治療実験を実施する。また、(2)近赤外光照射による局所発熱を利用した腫瘍特異的治療法については、今年度見出した光照射条件に基づき、放射性標識ポリオキサゾリン誘導体を用いた腫瘍集積性評価および治療実験を実施する予定である。
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