研究課題
本研究の目的は、胃癌組織中の間質中に存在するCancer Associated Fibroblasts(CAFs) の遺伝子異常や癌細胞との相互作用に関する重要な分子を最新のゲノム解析テクノロジーを用いて明らかにする事であった。臨床検体からの核酸抽出、サンプルの輸送(日本→シンガポール)、次世代シークエンサーを用いた網羅的な解析を実施している。網羅的な解析結果をシンガポール大学にて確立された解析パイプラインを用いて統合解析し、胃癌の浸潤転移に関わる候補遺伝子の抽出を行なった。シークエンシングデータの統合解析から得られた候補遺伝子についてgain of function、loss of functionの細胞を構築しin vitro assayにて機能解析をおこなった。さらにinhibitorや中和抗体、siRNAライブラリなどを用いた解析により癌細胞の増殖能、浸潤・転移能へ影響力の強い因子を同定し治療標的としての可能性を評価した。免疫不全マウスへのxenograftモデルによる検証も並行しておこなうことで、生体内での腫瘍形成、浸潤・転移能についても合わせて評価した。胃癌組織における候補遺伝子の発現解析に加えてコホートデータを用いることで、網羅的解析から得られた知見の臨床的意義について評価した。胃癌組織の間質中CAFsに依存する新しい胃癌浸潤メカニズムを見出し消化器病学のトップジャーナルに研究成果を報告している(Ishimoto et.al. Gastroenterology 2017 in press)。今後、これらの知見に基づいて腫瘍間質が胃癌細胞自体の特性、とくに癌幹細胞性に与える影響について検討を行なっていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初より国際共同研究を計画していたが、シンガポール大学と熊本大学のそれぞれの研究組織が得意とする研究手法を活かした共同研究を展開する事が出来ている。これまでの解析から得られたデータの中から胃癌組織の間質中CAFsに依存する新しい胃癌浸潤メカニズムを見出し消化器病学のトップジャーナルに研究成果を報告した(Ishimoto et.al. Gastroenterology 2017 in press)。また、研究の成果は日本国内の複数の全国学会、シンガポールで開催されたヨーロッパ腫瘍学国際学会、アメリカ癌学会総会にて報告をおこなった。また、現在もDuke-NUS Graduate Medical School Singaporeとの共同研究は順調に継続されている。
Diffuse-type胃癌間質細胞を用いた網羅的なゲノム解析の結果、間質におけるTGF-β signalingはrhomboid family memberの一つであるRHBDF2により調節されていることを明らかにした。更にTGF-β signaling活性化を調節しているRHBDF2の発現誘導は、炎症性サイトカイン(TNFα+IL-1α+IL-1β)によって引き起こされる事を見出した。間質側で活性化しているシグナル及び活性化メカニズムが明らかになったため、今後これらの知見に基づいて腫瘍間質が胃癌細胞自体の特性、とくに癌幹細胞性に与える影響について検討を行なっていく予定である。これまでの解析に用いたマウス胃壁移植モデルを用いて生体レベルでの解析もおこなっていく。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
Gastroenterology
巻: in press ページ: in press
10.1053/j.gastro.2017.03.046.
Oncotarget.
巻: 7(15) ページ: 19748-61
10.18632/oncotarget.7782.
Int J Cancer
巻: 138(5) ページ: 1207-19
10.1002/ijc.29864.