研究課題
Diffuse-type胃癌は間質との相互作用が強く、腹膜播種やがん性リンパ管症などの切除不能な転移を引き起こしやすい。腫瘍間質に存在する細胞の中でCancer Associated Fibroblasts (CAFs)は、サイトカインや成長因子などの液性因子を分泌し、腫瘍進展・転移に関わる事が報告されている。本研究の目的は、胃癌組織中の間質中に存在する CAFsの遺伝子異常や癌細胞との相互作用に関する重要な分子を最新のゲノム解析テクノロジーを用いて明らかにする事であった。シークエンシングデータの統合解析から得られた候補遺伝子RHBDF2についてgain of function、loss of functionの細胞を構築し機能解析をおこなった。さらに免疫不全マウスへのxenograftモデルによる検証も並行しておこなうことで、生体内での腫瘍形成、浸潤・転移能についても合わせて評価した。胃癌組織における候補遺伝子の発現解析に加えてコホートデータを用いて、網羅的解析から得られた知見の臨床的意義について評価した。胃癌組織の間質中CAFsに依存する新しい胃癌浸潤メカニズムを見出し研究成果を報告している(Ishimoto et.al. Gastroenterology. 2017 Jul;153(1):191-204.)。さらに炎症性サイトカイン刺激をおこなったCAFsの網羅的な遺伝子発現解析の結果から、CAFsは様々な分泌タンパク質や細胞外小胞を産生することを見出している。今後はこれまでの研究結果に基づいて、CAFs由来因子によって引き起こされる胃癌特性の変化、とくに抗がん剤抵抗性などの癌幹細胞性に与える影響について検討を行なっていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究計画時から現在までDuke-NUS Graduate Medical School Singaporeと熊本大学のそれぞれの研究組織が得意とする研究手法を活かした共同研究を展開する事が出来ている。胃癌組織の間質中CAFs特異的に発現するRHBDF2遺伝子を同定し、CAFsに依存する新しい胃癌浸潤メカニズムを見出し消化器病学のトップジャーナルに研究成果を報告した(Ishimoto et.al. Gastroenterology. 2017 Jul;153(1):191-204.)。現在はCAFsによって引き起こされる治療抵抗性メカニズムについての研究を展開している。また、研究の成果は日本国内の複数の全国学会、北京で開催された国際胃癌学会、アメリカ癌学会総会にて報告をおこなった。
これまでの研究結果から、CAFsにおいてTGF-βシグナルを調節しているRHBDF2発現誘導に関わる炎症性サイトカイン(TNFα+IL-1α+IL-1β)を同定した。腫瘍炎症環境において、CAFsは様々な分泌タンパク質や細胞外小胞を産生することを見出しており、今後はCAFs由来因子によって引き起こされる胃癌特性の変化、とくに抗がん剤抵抗性などの癌幹細胞性に与える影響について検討を行なっていく予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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