研究課題
骨リモデリングにおいて、破骨細胞により骨吸収された部位を選択的に埋め戻す様式で骨形成が生じるカップリング現象が現象論としては明らかとなっている。一方で、この埋め戻しが起こる部位の選択性や、埋め戻し量の制御機構は不明な点が多い。本研究では、こ のメカニズムの一端を解明することで、骨代謝の生理学 的理解を深めることを目的としている。これまでの研究から、破骨細胞はその活性化に伴って、多量の膜小胞を細胞外に放出していることを見出しており、この膜小胞上に搭載されたタンパク質に関して、少なくともその一部のは種々の生理活性があることを見出している。その中の生理機能の一つとして、骨芽細胞の細胞遊走性に影響を与えるという知見を見出しており、そのメカニズム解析や生理的意義に関して、解析を進めている。具体的には、破骨細胞由来細胞外膜小胞を骨芽細胞様細胞に添加した際の、骨芽細胞内のシグナル伝達経路の活性化状態をモニターするため、リン酸化プロテオミクスの実験を進め、詳細な分子機構の解明に取り組んでいる。また、in vivoで、破骨細胞由来の細胞外小胞が拡散する範囲を同定することで、生体内のどの部位で、in vitroで観察された現象が起こりうるか、検証を進めることを計画し、生体内での破骨細胞由来の膜小胞や、骨代謝に関連する細胞を蛍光にて可視化することが可能な動物モデルの構築を進めてきた。これらのin vivo解析の準備は整いつつある。翌年度には、更なる解析を進めていくことで、in vivo、in vitroの両面から、破骨細胞由来の細胞外膜小胞が有する生理的役割を、特に骨芽細胞の遊走性制御の観点から解明を目指す。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していたin vitroの解析に関して、順調に進めていると同時に、in vivoでの解析を目的とした実験動物構築の準備なども行っており、研究課題において設定した目的に対して、多角的に検討を進めることができている。更なる解析を進める事で、破骨細胞由来の細胞外小胞の新たな生理機能の発見につなげることができると考えている。
現在、in vitroでは、リン酸化プロテオームに基づいて、破骨細胞由来の細胞外膜小胞が、骨芽細胞内のシグナル伝達経路に与える影響の解析を進めている。これらシグナル経路と、細胞外膜小胞に搭載されているタンパク質との関連を、システムバイオロジー解析で汎用される手法を用いて解明することを試みる。また、この解析で示唆されたメカニズムのうち、骨芽細胞の遊走制御に関わる経路を、種々の阻害剤や、遺伝子発現抑制の手法を用いて、in vitro似て検証する。また、これらin vitro解析にて見出された知見が、in vivoで波及しうる範囲をin vivoで検証するため、破骨細胞由来の細胞外膜小胞を蛍光標識する様に設計した動物モデルの構築を進めており、この動物モデルを完成させる。モデル動物樹立後は、細胞外膜小胞分布と骨芽細胞の空間的関係性を解析することで、破骨細胞由来の細胞外膜小胞が、骨芽細胞の遊走性に関して、in vivoで影響を与えるか検証を進める。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Nature
巻: 561 ページ: 195-200
10.1038/s41586-018-0482-7