研究課題
昨年に引き続き、申請者の所属する施設にすでに保管され、インフォームドコンセントにより同意の得られている婦人科癌症例の凍結癌組織より、Invitrogen 社のTRIzol を用いてtotal RNA を抽出している。RNAの品質を確認後、Illumina 社のTruSeq RNA サンプル調整キットを用い、ライブラリー作成後Illumina HiSeq 2500でペアエンドRNA シークエンス(100bp)を行っている。昨年実施したRNAシークエンスデータについて2つの融合遺伝子同定プログラムを用いて、卵巣明細胞癌に関連する治療標的融合遺伝子候補を抽出した。融合遺伝子がドライバーイベントである可能性を評価するために、本研究内容について先進ゲノム支援の採択を受け、明細胞癌に対する全エクソンシークエンスを東京大学で実施していただき、現在遺伝子変異プロファイルの同定を進めている。さらに、卵巣肉腫に対する全エクソンシークエンス + RNAシークエンスによるゲノム・トランスクリプトーム解析を行い、dドライバー遺伝子候補として、NUTM1融合遺伝子・PRUNE遺伝子変異を同定し、卵巣肉腫がNUT1-associated tumorの一つである可能性を明らかにしており、現在論文投稿中である。またキナーゼ融合遺伝子で最も頻度の高いFGFR3-TACC3融合遺伝子について子宮頸癌症例で検討を行い、日本人子宮頸癌症例におけるFGFR3-TACC3融合遺伝子の頻度を明らかにしている。またFGFR3-TACC3融合遺伝子の子宮頸癌の癌化への関与をin-vitro/vivoで評価し、FGFR3-TACC3融合遺伝子を標的とした新しい治療戦略を提案し、論文として報告を行なっている。
2: おおむね順調に進展している
RNA sequencing dataおよびWhote-exome sequencing dataの取得は順調に行われており、また解析についてもすでにパイプラインを作成していることから、研究計画は順調に進んでいる。また融合遺伝子の機能解析結果についても論文として報告することができており、昨年度の遅れを取り戻すことができている。
今年度が最終年にあたるため、取得されたRNA sequencing dataおよびWhole exome sequencing dataの統合解析を行い、卵巣癌の病態解明を進める予定である。また融合遺伝子の意義について、今回取得した融合遺伝子プロファイルデータと9000症例以上のTCGAの大規模融合遺伝子プロファイルデータを用いて、新しいアルゴリズムを用いて解析を開始する予定であり、この結果についても年度末までにまとめる予定にしている。また、研究代表者がこれまでに共同研究を行っている複数のバイオインフォマティクスおよびゲノムのエキスパートと研究内容及び解析結果について議論を行うことで、解析手法の完成度を高め、より精度・信頼性の高い結果を報告できるようにする。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
International Journal of Gynecologic Cancer
巻: 28 ページ: 782~787
10.1097/IGC.0000000000001218
Oncogenesis
巻: 7 ページ: 4~4
10.1038/s41389-017-0018-2
Oncogene
巻: 37 ページ: 1205~1219
10.1038/s41388-017-0033-y
Nucleic Acids Research
巻: 46 ページ: D1144~D1149
10.1093/nar/gkx1018
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 114 ページ: E7301~E7310
10.1073/pnas.1705441114
British Journal of Cancer
巻: 117 ページ: 717~724
10.1038/bjc.2017.228
Nature Communications
巻: 8 ページ: 15539~15539
10.1038/ncomms15539
Cancer Science
巻: 108 ページ: 632~640
10.1111/cas.13196