研究課題/領域番号 |
16H06268
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村上 祐介 九州大学, 医学研究院, 助教 (50634995)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 網膜変性 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
網膜色素変性(RP)は様々な遺伝子異常によって視細胞が障害される疾患群で、我が国において失明原因の上位を占める難病である。最近の我々の研究から、RP の病態への慢性炎症の関与が明らかとなり、特にマクロファージの持続的な活性化は病態形成に重要と考えられる。本研究ではスタチンの単球/マクロファージに対する抗炎症作用に着目し、国産のナノ粒子作成技術を応用したスタチン封入ナノ粒子製剤を使用し、その視細胞保護作用について検討する。炎症を標的としたRPに対する新しい治療戦略の確立を目指すとともに、我が国発の新規治療薬の開発に向けた前臨床研究を行う。 昨年、一昨年の研究から、RPモデルマウスでは網膜変性に合わせて末梢血の炎症性単球が増加すること、また網膜においても末梢血由来と考えられるマイクログリアの増加が見られることが分かった。炎症性サイトカインを特異的に欠失させたRPモデルマウスでは、末梢血の炎症性細胞が減少し、網膜変性が抑制されたことから、末梢血の炎症性単球は病態を負に修飾していると考えられた。我々が開発した新規ナノ粒子は、末梢血の炎症性単球に高い効率で薬剤を導入することができた。本技術を用いてスタチンを末梢血単球内に導入することで、網膜の活性型マイクログリアが減少し、視細胞が抑制されることが明らかとなった。現在本ナノ粒子製剤の臨床応用を目指して、作用メカニズムの解析、最適な治療プロトコールの検討、さらにRP患者の末梢血の解析などを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RPモデルマウスの末梢血において、炎症生単球が増加していること、さらに網膜に末梢血由来の炎症型マイクログリアが増加することを明らかとした。ナノ粒子製剤の投与、あるいは炎症生サイトカインの遺伝子欠失によって、炎症の抑制ならびに網膜変性が抑制できることが分かった。概ね研究計画に沿って研究を進められているが、H29年度に予定していた炎症生のadaptive transferの実験がやや遅れている(網膜変性組織の自発蛍光のため、移植細胞の蛍光ラベリングを特異的に検出することが難しいことが分かったため)。またRP患者の末梢血解析も進めているが、仮説のように炎症性単球の増加が捉えられておらず、サンプリングの方法やサンプル数を調整して、再検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
スタチン封入ナノ粒子製剤の作用機序について、特にマクロファージ/マイクログリアの形質(炎症型/抗炎症型)に着目してメカニズム解析を行う。また薬剤濃度や治療開始時期の治療効果に与える影響についても検討し、臨床応用を念頭においた最適な治療プロトコールの確立を目指す。同時に本薬剤の網膜変性疾患に対する新規特許取得の準備を進める。また動物モデルのみならず、RP患者の末梢血の単球解析もより詳細に解析し、RPに関連した単球の形質変化ならびにスタチン封入ナノ粒子製剤の極性変化作用についても検討する。
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