研究課題
網膜色素変性(RP)は様々な遺伝子異常によって視細胞が障害される疾患群で、我が国において失明原因の第2位の難病である。最近の我々の研究から、RPの病態への慢性炎症の関与が明らかとなり、特にマクロファージの持続的な活性化は病態形成に重要と考えられる。本研究ではスタチンの単球/マクロファージに対する抗炎症作用に着目し、国産のナノ粒子作成技術を応用したスタチン封入ナノ粒子製剤を使用し、その視細胞保護作用について検討する。炎症を標的としたRPに対する新しい治療戦略の確立を目指すとともに、我が国発の新規治療薬の開発に向けた前臨床研究を行う。3年間の研究から、RPモデルマウスでは網膜変性に合わせて末梢血の炎症性単球(IMo)が増加すること、また網膜において内在性のマイクログリア(ReMG)、末梢血由来のマクロファージ(MoMF)が共に増加していることが分かった。IMoの遊走に重要であるケモカインCcl2を特異的に欠失させたRPモデルマウスでは、IMo、MoMFが減少し、網膜変性が抑制されたことから、IMo/MoMFは病態を負に修飾していると考えられた。一方で、CSF1R抗体を用いてReMG分画を消去すると、網膜変性が増悪したため、ReMGは神経保護的に働くと考えられた。我々が新しく開発したナノ粒子(NP)をマウス静脈内に投与すると、旧型NPと比較して高効率にIMo/MoMFに薬剤を導入することができた。ピタバスタチンを封入したNPを静脈内投与すると、RPモデルマウスノIMo/MoMFが減少し、視細胞死が抑制された。通常のピタバスタチンの内服では、高濃度投与群(臨床使用量の10倍以上)でしか視細胞死が抑制されなかった。NPは低容量でIMo/MoMFに効率的に薬剤をデリバリーすることができるため、副作用を抑えながら高い有効性を示すことが可能であり、臨床的な優位性が示された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol
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