研究課題
遺伝性網膜疾患は先進国において最も頻度の高い失明原因となっている。Stargardt病(STGD)、網膜色素変性症、黄斑ジストロフィ、錐体桿体ジストロフィをはじめ多くの疾患がABCA4異常に起因し、ABCA4関連網膜症の病態理解、治療導入が急務である。本研究の目的は、東京医療センター(NISO)、英国UCL、米国NIH、STGD国際共同プロジェクト(ProgSTAR)の連携の下、3大陸を跨いだ形でのABCA4関連網膜症国際コホート・共有データベースを作成する事である。さらに、変異構造解析を用いた遺伝子型・表現型関連解析、頻出変異の大陸間比較を行うことで、大陸・民族間の病態差異を理解した上での世界規模での治療導入の考案・個別化医療の実践を目指す。本研究は1)臨床診断・患者リクルート、2)遺伝子検索、3)国際データベース・コホート作成、4)変異インパクトスコア算出、5)遺伝子型・表現型関連解析、(6)コホート間変異頻度比較、(7)治療法考案、の七段階で遂行される。平成30年4月現在、NISOではABCA4関連網膜症155症例における臨床検査・診断、患者リクルートが終了し、現在までに20例について36のABCA4変異が同定されている。英国UCLからは190症例、米国NEI/NIH、ProgStar studiesからは193症例が登録され、計518例のABCA4関連網膜症がデータベースに登録された。現在までに同定された37の高頻度ミスセンス変異に対して、molecular modelingによるインパクトスコア算出が終了し、本スコアが遺伝子型・表現型相関解析に利用されている。公開データベースより得られた各民族正常者コホートにおけるABCA4変異頻度比較が可能となるインハウスデータブラウザの構築が完了しており、コホート・民族間変異頻度比較に活用されている。
2: おおむね順調に進展している
1)臨床診断・患者リクルートはNISO/UCL/NEI、3機関における画一化された臨床診断に基づき行われ、平成30年4月現在、NISOではABCA4関連網膜症155症例のリクルートが終了した。英国UCLからは190症例、米国NEI/NIH、ProgStar studiesからは193症例が登録され、計518例の症例リクルートが完了した。2)Columbia Universityとの技術協力の元、遺伝子変異同定が進行中であり、本邦/英国/米国20/190/193例についてそれぞれ、36/148/148の変異が同定された。3)全518症例の臨床・遺伝データは、本研究で構築されたABCA4網膜症国際データベースへの登録が完了した。4)変異構造解析についてはNEIとの協力の下、インパクトスコア算出に必要となる野生型・遺伝子変異型ABCA4タンパク質モデルが作成され、37の高頻度ミスセンス変異に対して、Protein folding/unfolding energyが算出され、これがインパクトスコアとして活用されている。5)遺伝子型・表現型関連解析については、ヌル変異にをベースとした遺伝子型重症度分類、molecular modelingによるインパクトスコア、両者を利用した相関解析が計518例のコホートについて進行している。6) コホート間変異頻度比較については、公開データベースより得られた各民族正常者コホートにおけるABCA4変異頻度比較が可能となるインハウスデータブラウザの構築が完了しており、疾患コホート・民族間変異頻度比較に活用される。7)治療法の考案についてはUCLとの連携の下で進行しており、p.G1961E関連症例に対する網膜毒性物質(A2E)蓄積阻害薬を用いた薬物治療の導入、スプライシング変異に対する、核酸医薬を用いた薬物治療の導入が考案されている。
平成30年度は、1)臨床診断・患者リクルート、2)遺伝子検索、3)国際データベース・コホート作成、4)変異インパクトスコア算出、5)遺伝子型・表現型関連解析、(6)コホート間変異頻度比較、(7)治療法考案、の七段階全てが完遂される。2)平成30年度はNISO症例で遺伝子検索中である133症例についてABCA4遺伝子解析を完了し、3)ABCA4網膜症国際データベースに全518症例の臨床情報・遺伝子変異情報が登録される。4) 変異インパクトスコアについては算出対象をさらに拡大し、全ミスセンス変異に対して、folding/unfolding energyの算出が計画されている。5) 遺伝子型・表現型関連解析については遺伝子型重症度分類(null変異数に基づく重症度3分類)、ミスセンス変異に対する変異インパクトスコア(高頻度ミスセンス変異に対して絶対値として算出)を得られた表現型パラメターと比較検討する事で、全518症例により構成される世界最大コホートにおける遺伝子型・表現型の関連・相関が同定される。6)平行して、各コホート・民族間の正常群、疾患罹患群におけるABCA4遺伝子変異頻度比較がインハウスデータブラウザを活用した形で実践され、大陸・民族間の病態差異についての比較検討が完了する。7)治療適応、治療法の選択、治療への準備行程に関しては英国UCL、米国NEI/NIH、ProgSTARとの協議の下、随時考案される。ビタミンA代謝抑制薬、核酸医薬、遺伝子置換治療、オプトジェネテイクス治療、再生細胞移植などをターゲットに、大陸間・民族間での病態差異を理解した上で、個々の病状に応じた治療導入が計画され、個別化医療の実践が世界規模で推進される。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 4件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 13件、 招待講演 8件) 備考 (1件)
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