研究課題
生命科学の研究領域において、形態・機能イメージングは分子・細胞・組織から個体に至るまで汎用されており、その必要性は年々高まっている。一方、イメージング機器の多様化・先端化・高額化と操作技術や画像解析技術の高度化により、個々の大学等の研究機関において、先端的イメージング機器を集中的に整備・運用することは困難になってきている。本事業では、我が国における生命科学を包括した先端イメージングの支援を行うことを目的とし、最先端の光学顕微鏡、電子顕微鏡、磁気共鳴装置を所有し、先進的な技術開発を行っている生理学研究所と基礎生物学研究所を中核機関とし、各種の先端・特殊イメージング機器を運用している全国の大学・研究機関とともに、プラットフォームを組織し、活動を行った。(1) 光学顕微鏡技術支援 : 分子や細胞、組織の時空間的な動態を高速、かつ高分解能で捉えるために、先端光学顕微鏡を用いた観察や、特殊観察技術に加えて、適切なプローブの選択・適用や、植物・海洋生物など特殊な試料調製、観察環境を要する対象について観察を支援する。(2) 電子顕微鏡技術支援 : 先端電子顕微鏡による生体高分子複合体の立体構造観察、組織・細胞の三次元微細構造の観察、蛍光顕微鏡観察と同一の視野の微細構造観察等を支援するとともに、必要な試料調製法から観察までの技術指導を行う。(3) 磁気共鳴画像技術支援 : 生体の構造と機能を、MRIを用いて可視化し定量解析する技術を標準化して提供することにより、脳画像等の研究を手がけている研究を支援するとともに、個々の研究への最適化を支援する。(4) 画像解析技術支援 : 光学顕微鏡、電子顕微鏡、磁気共鳴装置などによって取得された画像から、形態や動態に関する情報を抽出し、定量的な解析法や可視化する技術を利用者の目的や要望に応じて段階的に支援する。上記の支援活動に加え、イメージング技術の普及を目的とした技術講習会や支援成果を発表する場となるシンポジウムなどを開催した。上記の支援活動をサポートするための総括班を設け、総括班の下に設置した事務局が、支援状況と成果の集約、ホームページの管理や広報活動を行った。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は以下の活動を通じて、本プラットフォーム事業の周知と支援課題の募集を行った。応募されてきた申請の審査を行い、採択課題の支援を開始した。広報 : ホームページの構築、関連学会でのホームページやメーリングリスト、および各大学・研究機関ヘポスターを配付するとともに、日本植物生理学会、日本生理学会ではブース出展を行い、本プラットフォームの周知活動を行った。公募 : 5月と10月の2回の募集を行った。プレコンサルテーションは随時受付とし、支援要望に対しての窓口は常に開いて、イメージング支援の相談を行うとともに、緊急性を鑑みて随時申請による採択も行った。公募については、学会やメーリングリストなどを通じた公募情報の案内や、ポスターを作成して大学や研究機関に送付して広く周知した。また、ホームページにも公募情報および審査システムについて掲載した。支援活動 : 2回の公募と随時申請を通して、185件の課題を採択し、支援活動を開始した。その中には、Science誌やNature Cell Biologyを含む国際雑誌に掲載されるなど、既に成果に結びついた支援もある。また、イメージング機器操作技術及び画像解析技術についてのトレーニングコースを実施するとともに、支援担当者のスキルアップとイメージング技術の最新情報を共有するための講習会も開催した。評価 : 総括班に設置した外部委員を含めた総括支援活動運営委員会を2回開催し、当該年度の支援活動についての評価を行った。また、次年度の早い時期には、研究支援を受けた個々の研究者の支援内容に関する報告書、及び支援担当者からの報告書をとりまとめて、本プラットフォームの運営にフィードバックする予定である。シンポジウムおよびワークショップの開催 : 2月に「The 1st ABiS Symposium ‘Towards the Future of Advanced Bioimaging for Life Sciences’」を開催した。本シンポジウムは、ABiS主催のもと、イメージング技術を取り入れている新学術領域研究「レゾナンスバイオ」と「植物新種誕生原理」にも共催していただき、生命科学分野におけるイメージング技術の最先端技術の情報の共有化を図った。また、Euro-Bioimagingのコーディネーターとシンガポール大学イメージングセンター長を招聘し、ヨーロッパとアジアのイメージング連携について紹介をしていただき、今後の国際的な連携の可能性を探った。加えて、日本生理学会では2つのワークショップに共催した。
広報 : 本プラットフォームのウェブサイト上で事業内容の周知を行うとともに、4月に生命科学連携推進協議会企画の、5月には本プラットフォーム独自の支援説明会を開催する。また、関連学会の年会において、ブース展示や共催シンポジウムを実施し、生命科学の広い分野をターゲットとした周知活動を行う。公募 : 平成29年度も前期と後期の2回行う。前期は5月より、後期は10月より公募を開始する。ただし、プレコンサルテーションは随時受付とし、支援要望に対しての窓口は常に開いておき、緊急性の高い要望については随時申請を受け付ける。平成29年度より、応募・審査・成果報告をトータルに対応するオンラインシステムを稼働し、プラットフォームの利便性を高める。学会やメーリングリストなどを通じた公募情報の案内や、ポスターを作成して大学や研究機関に送付して広く周知する。また、ウェブサイトにも公募情報および審査システムについて掲載する。支援活動 : 平成28年度からの継続支援課題とあわせ、新規採択分の支援活動を進める。年度末には、支援状況や成果内容について、オンラインシステムを用い、支援者・利用者の双方から収集する。加えて、イメージング機器操作や画像解析技術についてのトレーニングを実施する。評価 : 研究支援を受けた個々の研究者の支援内容に関する報告書、及び応募・採択までのシステムや支援技術に関する要望などについてのアンケート調査を運営にフィードバックする。また、総括班に設置した外部委員を含めた評価委員会において当該年度の支援活動の評価を行う。シンポジウムおよびワークショップの開催 : ヒトを対象とした磁気共鳴画像に関する国際シンポジウムを9月に開催し、先端イメージング技術とヒューマンバイオロジーに関する情報共有を進める。また、先端モデル動物支援プラットフォームと合同で若手技術講習会を開催する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 3件、 査読あり 17件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (196件) (うち国際学会 50件、 招待講演 43件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (5件)
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