研究課題
・本事業で各観測点に設置されたVLFアンテナ、誘導磁力計、高感度全天カメラ、リオメータ、EMCCDカメラや、平成28年12月に打ち上げられたあらせ衛星、本事業で開発されているモデリングなどを通じ、令和元年度には38件の査読付き論文を国際学術誌に出版した。代表的な成果は以下が挙げられる。・ロシアのZhigansk観測点や米国のRBSP衛星における観測、モデル計算を組み合わせて、電磁イオンサイクロトロン波動(EMIC波動)が数百keVという従来考えられているよりも低いエネルギー範囲の放射線帯電子の消失に貢献していることを明らかにした。また、アラスカのGakona観測点のEMCCDカメラで高速撮像された脈動オーロラと、あらせ衛星で観測された磁気圏ELF/VLF波動(コーラス波動)の明滅の1対1対応を見出し、秒以下の時間スケールのオーロラの脈動が、コーラス波動の微細構造によって作られていることを世界で初めて明らかにした。さらにフィンランドのKannuslehto観測点とあらせ衛星で同時観測された磁気圏ELF/VLF波動を詳細に解析し、磁気圏赤道面における地球磁場の曲率が、ここで生成される波動の特性を大きく左右していることを明らかにした。これらの電磁波動の衛星ー地上観測の成果は、人類の宇宙利用の脅威となる放射線帯粒子の生成・消失の機構の解明につながる重要な成果である。・ノルウェーのトロムソ観測点で得られた熱圏風のデータ解析から、オーロラサブストーム開始前後の熱圏風の変動や地磁気静穏時の熱圏風の動態を明らかにした。また、北欧と南極昭和基地の大型レーダーとあらせ衛星の同時観測により、高エネルギー粒子の降込みに伴う中間圏レーダーエコーの発生を見出した。これらの観測は、宇宙空間からの高エネルギープラズマ粒子の流入に対する地球大気の応答を明らかにする上で重要な成果である。
2: おおむね順調に進展している
・フィンランド、アイスランド、カナダ、ロシア、アラスカ、日本などの既存の観測点の自動定常観測を維持・継続している。残っているカナダのNain観測点もすべての装置及び記録計の設置を終了し、キャンペーンベースで稼働させることができており、得られたデータの解析も進められている。・引き続き、これらの観測で得られるデータをERGサイエンスセンターとIUGONETによるデータベースを利用してデータベース化して公開し、国内・海外との共同研究を促進することができている。・定常観測を継続している日本のERG(あらせ)衛星の軌道に合わせて、令和元年度の秋にもキャンペーン観測を行った。また、米国のVan Allen Probe衛星・THEMIS衛星などの内部磁気圏衛星との同時観測データの解析を進めることもできている。・波動と粒子の相互作用を局所的およびグローバルに評価するモデリングの開発を継続し、これらの観測と比較することで、モデルの改良と粒子加速・消失の定量評価を行いつつある。・これらの地上・衛星観測、モデリングから、数多くの研究成果が得られている。
・カナダのNain観測点は、電源が得られない場合は発電機を活用してあらせ上空通過時などに観測を行ってデータを取得していく。・本研究では8か所の観測点・5種類の機器から大量のデータを得ている。これらの観測データはすべて大容量ストレージに保管され、世界的に広く使われているCDFフォーマットに変換されて、ネットワークを介して世界の研究者に公開されている。昨年度に引き続き、新しく得られてくるデータも世界の研究者に公開し、データ利用の促進と成果の創出をはかっていく。・本事業ではホームページ(http://www.isee.nagoya-u.ac.jp/dimr/PWING/)を立ち上げてデータの説明や進捗状況、データへのリンク先などを公開している。このホームページを引き続き運用し、情報発信をはかっていく。さらに、関連研究の国際ワークショップや国際シンポジウムを開催して、成果の創出をはかっていく。・本研究の成果は、科学論文として発表していくだけでなく、さまざまな形で社会へ発信していくことが重要である。このために、出前授業や、大学院生・若手研究者向けの国際スクール、重要な成果のプレスリリースなどを実施していく。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (38件) (うち国際共著 32件、 査読あり 38件、 オープンアクセス 30件) 学会発表 (106件) (うち国際学会 61件、 招待講演 10件) 備考 (5件)
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