研究課題/領域番号 |
16H06287
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
住 貴宏 大阪大学, 理学研究科, 教授 (30432214)
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研究分担者 |
松尾 太郎 大阪大学, 理学研究科, 助教 (00548464)
村木 綏 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 名誉教授 (70013430)
芝井 広 大阪大学, 理学研究科, 教授 (70154234)
阿部 文雄 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (80184224)
松永 典之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (80580208)
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研究期間 (年度) |
2016-04-26 – 2021-03-31
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キーワード | 系外惑星 / 重力マイクロレンズ |
研究実績の概要 |
本研究は、南アフリカ共和国に1.8m広視野望遠鏡を建設し、世界最大級の近赤外線カメラを搭載して、世界で初めて近赤外線での重力マイクロレンズ系外惑星探査を行う(PRime-focus Infrared Microlensing Experiment:PRIME)。背景天体の前を他の星(レンズ天体)が通過すると、その重力がレンズの様な働きをして背景天体からの光を一時的に増光し、マイクロレンズイベントとして観測される。この時レンズ天体の周りに惑星があると、その重力によりさらにレンズを受け検出される。これまで、我々MOAグループは可視光で観測してきたが、近赤外線では可視光に比べて以下の利点がある。星間減光が強い銀河系中心近くを観測可能。星数密度が高く惑星発見数が増える。星数密度が高い領域での惑星頻度を世界で初めて見積もり、環境による惑星頻度の違いを検証できる。これらにより惑星形成、進化の過程を解明する。2025年頃打ち上げ予定のNASAのWFIRST衛星は、マイクロレンズ系外惑星探査の決定版である。本研究では、WFIRSTチームが所有する赤外線検出器を借用する。これにより(a)赤外線検出器のテスト(b)WFIRSTの観測領域の最適化(c)WFIRSTとの同時観測、を行う。これらにより我々の系外惑星研究のサイエンスゴールを達成すると同時に、WFIRSTに日本が大きな貢献をする事が可能となる。望遠鏡製作に関しては、順調に進んでおり、本年度は、1.8m主焦点広視野望遠鏡用鏡筒部、望遠鏡コントロールシステムの製作を完了した。南アフリカ天文台は、望遠鏡を格納する建物の概念設計を行なった。 カメラ製作に関しては、1年程度遅れが生じているが、それ以外は大きな変更はない。本年度は、カメラの熱設計、機械設計を含む詳細設計を行い、カメラ部品の一部である冷凍機3台を購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MOA-II望遠鏡による高銀緯バルジの観測は計画通り続けた。経験を積ませるために、大学院生等のべ21人が現地で観測をした。この期間に、系外惑星候補を約10個発見し、大学院生や海外の共同研究者達と共にデータ解析をして成果としてまとめている。これら高銀緯領域の結果は、本研究の成果と比較するために必須であるが、順調に成果を出せている。望遠鏡に関しては、前年度までに諸事情のために1年程度遅れが生じているが、それ以降は大きな変更もなく順調に進んでいる。本年度は、1.8m主焦点広視野望遠鏡用鏡筒部、望遠鏡コントロールシステムの製作を完了した。南アフリカ天文台は、望遠鏡を格納する建物の概念設計を行なった。 大阪大学は、メリーランド大学と協力して、NASA WFIRST衛星計画から近赤外検出器を借り受け、広視野赤外線カメラをNASAのゴダードセンター(GSFC)で製作する計画である。カメラ製作に関しても大きな変更はないが、1年程度遅れが生じている。本年度は、カメラの熱設計、機械設計を含む詳細設計を行なった。本来、詳細設計後に、カメラ製作にはいる予定であったがNASA本部、NASA/GSFC、WFIRSTプロジェクト、メリーランド大の関係各所との調整に時間を要し、カメラ詳細設計開始が遅れたため、カメラ部品の一部購入に留まった。赤外線検出器の貸与を含む本計画は 、前年までに関係各所での大筋了承を得ていたが、ゴ ダードでの実際のラボ使用許可や検出器のITAR(武器国際取引に関する規則)をクリアする道筋を見極めるのに時間を要した。また、これにはWFIRST全体に関するNASA-JAXA間の合意も必要だが、米国大統領予算でWFIRST計画に一時的な不透明性が生じたため、合意に時間を要していることも影響している。現在はNASA本部やゴダードの担当者と手続きを進め、製作を始められるように準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
MOA-II望遠鏡による高銀緯バルジの観測はこれまで通り続ける。バルジが観測可能な3月から11月に22領域( 50平方度)を観測する 。7月頃は、この領域を1日10-50回も観測できる。従来は、日本のメンバーが現地に行き観測してきたが、 現在はニュージーランド現地観測員を増やし、本研究の主要メンバーとは独立に、名古屋大学とニュージーランドメンバーで運営できる体制に移行しており、我々は新広視野近赤外望遠鏡建設に集中できる。ただ、新望遠鏡完成までは、観測経験を積むために本研究の大学院生も観測に派遣する。MOAメンバーのD.Bennett 氏(NASA/GSFS、米国)やIan Bond氏(マッシー大学、NZ)が中心となり大学院生と共にデータ解析をして成果を論文にまとめて、本研究の成果と比較できる様にする。 新広視野近赤外望遠鏡の建設に関しては、国内での組立調整を完了し、南アフリカ、サザーランド観測所にインストールする予定である。また、並行して、南アフリカ天文台と協力して、観測所にドーム建物、コントロールルームの詳細設計を完了して建設をする予定である。ここで、望遠鏡を制御するシステム(PC及びソフトフェア)を現地で構築する。Alexaner Kutyrev氏(NASA/GSFS、メリーランド大、米国)らは、NASAのゴダードでWFIRSTチームが所有している H4RG近赤外線検出器4枚を使い、カメラ本体、冷却系及びフィルター交換装置の製作を始める。ここで、米国現地に滞在する大学院生もNASA、メリーランド大のグループとの連携を計り開発に参加する。さらに、南アフリカ、サザーランド天文台現地に設置する計算機を用意して、Difference Image analysis (DIA)を用いたリアルタイムデータ解析パイプラインの移植も進める。
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