研究課題/領域番号 |
16H06293
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石原 達己 九州大学, 工学研究院, 教授 (80184555)
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研究分担者 |
八島 正知 東京工業大学, 理学院, 教授 (00239740)
酒井 孝明 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20545131)
萩原 英久 富山大学, 研究推進機構 水素同位体科学研究センター, 准教授 (30574793)
伊田 進太郎 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (70404324)
ステイコフ アレクサンダー 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (80613231)
ドルース ジョン 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 助教 (50635886) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-26 – 2021-03-31
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キーワード | 触媒 / 化学機械応力 / ナノサイズ効果 / イオン伝導性 |
研究実績の概要 |
Au分散による熱膨張差を利用した化学機械応力の導入を各種の触媒材料について検討した。まず、TiO2光触媒について昨年度に引き続き検討を行った。その結果、Auを分散して常圧焼結を行うことで機械的な引っ張り応力の発生を行えることを確認し、アナタース型TiO2が安定化されることを見出した。この結果、Auを分散して焼結後、粉砕したTiO2触媒は通常のAuを担持した触媒に比べて大きな活性の向上が行えることが分かった。さらにPtについては、さらに顕著な効果があることが分かった。一方、このようなAuの分散効果についてPr2NiO4からなる電極触媒への応用を検討した。その結果、Pr2NiO4は表面の酸素の解離活性は低いものの、Auを分散して引っ張り応力を発現すると、表面の酸素の解離活性は大きく向上し、良好な酸素の解離活性が発現し、燃料電池において発電特性が大きく向上できることが分かった。そこで、引っ張り応力は、電極特性においても大きな正の効果があることを明らかにした。 レーザーアブレーション法での電極成分の製膜と基板との引っ張り応力による表面反応性の変化を検討した。今年度はBa(La)CoO3の製膜をY2O3安定化ZrO2(YSZ)上に行った。その結果、YSZ単結晶基板上では、基板の水平方向に引っ張り応力が、垂直方向いは圧縮応力が発生できることが分かった。化学緩和法による表面の酸素の解離の速さを評価したところ、引っ張り応力の働いている膜ほど、早い緩和をしめすので、表面での酸素の解離と拡散性が向上していることが示唆された。今後、さらに基板等の影響を検討し、配向性を制御することでユニークな物性の発現を期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ目的とした項目を行っており、成果も予想されたように化学機械応力による性能の向上効果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までにいくつかの触媒系について、興味ある化学機械引っ張り効果を見出すことができたので、今後は主に化学機械引っ張り応力が正の効果を発現する機構について、詳細な検討を行う予定である。具体的には化学機械応力の発生した電極材料や触媒材料について化学機械応力と表面組成の変化を詳細に検討し、触媒反応の違いが表れた理由が表面の組成の違いで発現することを検討する。このために各種材料の表面組成を低エネルギー散乱分光法やX線光電子分光法で検討するとともに、表面組成と物性との関係を検討する。一方で、機械的な引っ張り応力が発生したナノ粒子分散系で、酸素の電子状態を光電子分光法や電子線エネルギー損出分光法などを用いて解析し、電子状態の違いと酸素解離能との関係を明確にする。また第一原理計算により、このような電子状態の変化とモデルとの妥当性を検証する。一方で、新たな化学機械応力を発生する手法として巨大圧力ひねり加工を利用する化学機械応力と欠陥の導入効果を検討する。とくにNOの直別分解と光触媒について検討を行う予定である。 レーザーアブレーション法による製膜では化学機械応力の発生による電極特性の向上する機構を酸素同位体を用いて検討するとともに、バルクの酸素の伝導性や構造を、透過型電子顕微鏡を用いて詳細に観察する。とくに異なる酸化物によるダブルカラムナーではカラムナーの接合界面の様子や金属分散系では金属との接合界面の様子を詳細に観察し、結晶構造の変化などを明確にする。
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