研究課題/領域番号 |
16H06299
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松井 茂之 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (80305854)
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研究分担者 |
山田 誠 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (00581323)
角田 達彦 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10273468)
山下 智志 統計数理研究所, データ科学研究系, 教授 (50244108)
服部 聡 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50425154)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 個別化医療 / 臨床試験 / 研究デザイン / 統計解析 / 診断法開発 |
研究実績の概要 |
5年間のうち4年目にあたるR1年度は最終年度を念頭におき、これまでに行ってきた研究テーマの論文化はもとより、個別化医療の開発のための統計・機械学習の方法論の整備とその実践面の評価という視点から検討を行った。 A) 診断法の開発と評価では、前年度までに開発した階層モデルと経験ベイズ法に基づき、ベイズ因子を用いた包括的な疾患関連解析、複雑な相関構造をもつ脳画像データを用いた疾患関連解析について統計的手法の開発を行った。疾患の異質性解析では、HSIC lasso, factorization machine、各種カーネル法などの非線形モデリング解析の適用について検討した。併せて、ゲノム、トランスクリトーム、プロテームなどの多層オミックスの解析において、分子生物学上の知見を考慮した薬剤副作用予測、薬剤反応性・疾患特異性の検出・予測のためのアルゴリズムを多く開発した。 B) 診断法を用いたランダム化臨床試験では、診断法により分類される患者サブグループ別の治療効果をベイズ流事後確率で捉え、その統計的有意性を評価する枠組みを構築した(頻度論とベイズ流アプローチの融合)。また、クロスオーバーデザインなどの自己対照デザインを用いたより効率的な治療効果予測解析(検証含む)を開発した。 C) 最適な治療シーケンスの探索解析では、事例研究として救急現場における心臓波形予測に着手し、解析計画書の検討とともにデータベースの整理を行った。 以上の統計的方法論の検討に併せて、各種がん、二型糖尿病、救急など、多様な疾患領域での事例研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に同定した研究テーマの大半でかなりの進捗が得られており、統計・機械学習の方法開発、事例研究の双方で多くの論文を発表した。本研究プロジェクトの遂行では主に二つの方向性を意識している。一つはチャレンジングなテーマへの取り組みである。ステージA:診断法の開発と評価、ステージB:診断法に基づく治療法の有効性・安全性の検証、ステージC:診断法・治療法のエビデンス統合、ともに、一部のテーマ(学習曲線の推定など)を除き、多くのテーマで解決に向けて見通しをつけることができたと考えている。もう一つの方向性は、開発した統計・機械学習の方法を実践面の観点から評価することである。ほぼすべての方法論に対して特定の疾患領域、事例研究をマッチングできており、今後も順調に評価を行うことができると見込んでいる。海外との共同研究においては、新たに英国のニューカッスル大のグループと交流を開始し、多くのテーマ(マスタープロトコル試験のデザインなど)で共同研究を行うこととなった。以上より、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度にあたり、上記の二つの方向性でプロジェクト全体の成果をまとめる。すなわち、チャレンジングな課題に取り組みつつも、これまでの成果を統計的方法論とその実践の観点から整理し、指針をまとめる。個別の研究課題への取り組みについては次の通りである。分子診断マーカーの検出では、階層混合モデルと経験ベイズ推定の枠組みのもと、複数の個体グループの解析などへの拡張とともに、ベイズ因子などを用いて個々のマーカーの評価指標を確立する。また、これまで開発した各種非線形モデリング(factorization machine, カーネル法、localized lassoなど)を国内救急系学会の学会データベース等(例:救急での心臓波形予測等)に適用し、その有効性、有用性を評価する。診断法を用いた臨床試験による検証では、前年度に構築した頻度論とベイズ流のアプローチを融合した新しい臨床試験デザインの枠組みを具現化し、その性能を評価する。また、昨年度開発した同一個体で複数の治療を評価する自己対照デザイン(クロスオーバーデザインなど)での治療効果予測解析法についてはその有効性の評価を二型糖尿病の臨床試験への適用と数値実験を通して行う。診断法を用いた個別化医療を支援するツールの開発として、患者のきめ細かな情報をインプットとした最適治療同定のための強化学習、効用関数の偏りのない推定(内的妥当性と外的妥当性の評価)のための統計的方法を整理し、救急や院内感染症等の国内外データベースへの適用を通して、その有効性、有用性の評価を行う。
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