研究課題/領域番号 |
16H06300
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
羽生 貴弘 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (40192702)
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研究分担者 |
夏井 雅典 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10402661)
米田 友洋 国立情報学研究所, アーキテクチャ科学研究系, 教授 (30182851)
今井 雅 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (70323665)
池田 正二 東北大学, 国際集積エレクトロニクス研究開発センター, 教授 (90281865)
鬼沢 直哉 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (90551557)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 計算機システム |
研究実績の概要 |
一昨年度試作完了予定であったCMOS/MTJロジックLSIだが,地震などの自然災害を含めた様々なトラブルにより,昨年度末に11ヶ月遅れでチップ試 作が終了した.そのため,チップ測定結果から得られた知見を元に,本来の計画であれば本年度実施予定であったCMOS等価回路のLSIチップの試作予定を変更し,シミュレーションによる提案回路の応用展開を加速させた. 具体的には,共同研究者であるフランスCNRSのJ.-P. Diguet主任研究員のグループと共同で,脳型情報処理の一種である深層学習の推論処理の低消費電力を試みた.一般的に画像認識アプリケーションにおいては,深層学習ハードウェアの量子化がわずかな認識精度の低下で大幅な省電力化が実現されるに対して,音声認識等の他のアプリケーションにおいては,量子化により大幅な認識精度低下してしまう問題を見出した.そこで,提案のCMOS/MTJ回路に基づくMulti-Context Ternary Content-Addressable Memory(MC-TCAM)を考案し,高い認識精度を保ちつつ大幅な省電力化が可能なSelective Computing Architectureを提案した. この研究成果は,学術論文誌Journal of Applied Physics誌に採録されただけでなく,IEEE CAS Society Region 8のフラグシップカンファレンスである26th ICECSにおいてBest Young Professionals Paper Awardを受賞するに至った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一昨年度,昨年度には提案のCMOS/MTJロジックLSIの試作時期の大幅なずれ込み及び試作チップ評価の遅れにより,当初実施予定であった本年度以降の計画を変更した.変更に伴い当初予定していたCMOS等価回路の試作から,シミュレーションによる提案回路の脳型情報処理への応用展開を加速させた. 現在は,最終年度に計画しているシミュレーションによる大規模な脳型情報処理アプリケーションにおける提案手法の有効性の評価に向けて,計画はおおむね順調に推移している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの取組みで,提案のCMOS/MTJロジックLSIの試作・測定が完了し,脳型情報処理システムの基本論理ゲート回路としての原理動作を確認した.また,大幅な低消費電力化が達成できると期待される極細粒度パワーゲーティング機能を,試作した実チップ上で動作を確認した.最終年度である本年度(2020年度)は,提案CMOS/MTJロジックLSIの性能比較対象として,CMOSデバイスのみで別途チップ試作済みの同等機能ロジック回路についても,その基本動作を上記と同様に測定することで,提案CMOS/MTJロジックLSIの省電力化性能について評価・実証する. また,脳型情報処理システムへの応用展開として,シミュレーションレベルで提案のCMOS/MTJロジックLSIの省電力性について評価を行う.具体的には提案回路の性能(速度・電力など)をモデル化し,適用するAIアプリケーションにおける電力削減効果について評価を行う.提案回路は,実際に処理を実行している局所部分のみで電力を消費するという優れた省電力性を有しているだけでなく,予期せぬ電源遮断状態からの復帰時に遮断前の演算処理を再開可能な回路である.その意味で,提案回路技術はエナジーハーべスティングのような不安定な電源電圧供給下,または電源供給資源の限られたエッジ応用環境下でのコンピューティングの実現に適していることであり,省エネルギー性が必須なエッジAI応用等の具体的なシステム実現へ向けた検討に取り組む.
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