研究課題/領域番号 |
16H06305
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梶井 克純 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (40211156)
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研究分担者 |
佐藤 圭 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 室長 (10282815)
中嶋 吉弘 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20419873)
中山 智喜 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (40377784)
森野 悠 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (50462495)
坂本 陽介 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (50747342)
定永 靖宗 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70391109)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | HOxサイクル / オキシダント生成 / オゾン / PM2.5 / 大気汚染 |
研究実績の概要 |
RO2ラジカルの反応生測定手法の開発に成功した。モデル大気でNO2との反応について検証した結果、RO2NO2の生成および分解反応の速度定数の精密測定に成功した。数値モデルを開発し、エアロゾル内で遷移金属イオンが存在すると、触媒的にH2O2が生成しさらにフェントン反応によりOHラジカルが再生される可能性を示した。陽子移動反応型質量分析装置を導入し装置の最適化を図った。HOx収率測定のためにODラジカルを利用する技術の開発を進めた。 2019年夏季の横浜市環境科学研究所における集中観測を実施し、HO2ラジカルはPM2.5に取り込まれること及び取込係数とPM化学組成との間に明確な関係は見られないことを明らかにした。OH反応性測定から未知反応性がほとんど検出されなかった。野焼き排出ガスの未知反応性を評価するため、もみ殻や稲わらの野焼き実験を実施した。チャンバーをいた室内実験により、ガス成分を除去した二次有機エアロゾル(SOA)にHOxを暴露したときにられる粒の老化プロセスを調べ、SOA粒はHOxを取込むことにより酸化および分解に進むことを明らかにした。 オゾン生成レジーム直接判定については、エアロゾルを装置内に導入できるように改良し、オゾン生成レジームに対するエアロゾルの影響を直接評価できるようになった。夏季に横浜市環境科学研究所において集中観測を実施した。オゾン生成レジームは観測期間中の多くにおいて、都市域に特徴的なVOC律速と判定され、本観測においては、エアロゾルの有無がオゾン生成レジームに影響しないことが明らかとなった。またホルムアルデヒドのDNPHとHantzsch測定法との比較を行い、DNPH測定がNOx濃度に影響することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高い時間分解能でHO2ラジカルのエアロゾルへの取込み係数を実測できるようになり、夏季に横浜市環境科学研究所において集中観測を実施した。取込み係数とエアロゾルの化学成分の間に明確な相関関係は見出されていない。取込み過程の律速段階がバルク内での化学反応ではない可能性が出てきた。観測事例を積み上げて取込み過程を支配する要因の解明を進めたい。HOxサイクルで重要なRO2ラジカルの反応性を精密に測定できるようになった。NO2との反応ではRONO2の生成および分解反応の速度を測定した。これらは大気圧条件では初めての計測事例となった。HOxサイクルの実態解明に近づいたと評価と評価している。 2016年度にはO3及びNO3の暗反応によるSOA粒子の老化に関するチャンバー実験を実施し粒子の老化過程や光学特性を調べた。2017年度にはSOA粒子へのOHおよびHO2の取込係数を評価した。2018年には、前年度に実施したチャンバー実験でのOH反応性の測定結果をMCMモデルにより計算し再現性を調べた。2019年にはガス成分を除去したSOAにHOxを暴露することによる粒子の老化に関するチャンバー実験を実施し、粒子の老化過程や光学特性を調べた。 オゾン生成レジーム直接判定装置については、2017年度に初めて実大気観測を行うことができ、2019年度にはエアロゾルの有無による影響評価についても行うことができるようになった。準揮発性物質の測定についても、概ね順調に実施を行ってきたが、ガス状有機硝酸について、NOが測定値に干渉することが明らかとなった。この干渉については、試料大気にオゾンを添加し、NOをNO2に変換させる対策を構築する予定である。光化学生成物である過酸化水素の測定法については、湿式光吸収法により測定装置の開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年夏季の京都大学における集中観測を計画している。最終年度であり、開発してきた装置をすべて駆使して情報を集める予定である。HO2およびRO2反応性測定、OH反応性測定、重水素同位体を用いたOH反応性測定、RO2のエアロゾルへの取込み係数測定、有機硝酸類測定、オキシダント類、エアロゾルの同時測定を行い、エアロゾルによるHOxラジカル取込み過程の支配因子を検討する。OH反応性、HO2反応性、RO2反応性およびラジカル収率測定を同時に行い、観測している大気のもつ酸化速度(HOxサイクル回転速度)の直接決定を行う。PERCA法を用いることで、疑似太陽光照射下でのHOx 生成能の評価を行い、これらの成果を報告書にまとめる。 エアロゾルサブグループは2020年夏季の京都大学における集中観測に参加し、PM濃度およびその化学組成やO3添加によるポテンシャルエアロゾル測定等を担当する。昨年実施したHOxの取込によるSOAの老化に関する実験および野焼き実験等について、実験結果のデータを解析し、実験データの解釈を進める。以前に実施したSOA粒子のO3およびNO3の暗反応による老化プロセスに関する実験結果を論文にまとめて投稿する。環境研が主導して行ったSOAの老化に関するチャンバー実験の4年間の研究成果を報告書の形にまとめる。 準揮発性サブグループは夏季に実施予定の京都大学における集中観測に参加し、オゾン生成レジーム直接判定、有機硝酸やカルボニル化合物などの準揮発性物質の測定を行う。加えて過酸化水素の測定装置を導入し、試験測定および性能評価を行う。オゾン生成レジームに対するエアロゾルの影響評価を引き続き実施するとともに、2018年度に京都大学で実施された観測結果との比較検討も行う。これまで実施された観測データ解析を引き続き行い、オゾン生成レジームとオゾン前駆物質の関係性、準揮発性物質の動態等を明らかにし、結果を論文および報告書にまとめる。
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