研究課題
本研究の第一の目標は、化学物質審査規制法(化審法)で規定された変異原性検出試験の感度を改善することにある。第二の目標は、変異原性の作用機序を迅速に分類分けする手法を創ることにある。第一と第二の目標達成は、ヒトTK6細胞(化審法で推奨)から、DNA修復酵素欠損株を作製して達成する。これらの目標達成は、化学構造からその変異原性をAIに予測させる方法を開発するのに貢献する(AIの学習データの質を改善)。最終年度は、第一の目標達成の結果できた、感度を数倍改善した変異原性検出試験法を使い、以下の実績をあげた。現在、広く使われているin silico変異原性予測法(QSAR)は、Ames試験(化審法で規定、細菌を利用する)から得られたデータを学習データとして使う。問題は、AIの学習データに、Ames試験が変異原性陽性、哺乳類を用いる変異原性試験で変異原性陰性の化合物が多く含まれることである。これらの化合物のうち4種類を、感度を数倍改善したTK6細胞を用いる変異原性試験で解析し直した。その結果、オーラミンの『変異原性陰性』は偽陰性であり、オーラミンはヒトにも変異原性を発揮することが分かった(論文作成中)。第二の目標である作用機序解明について以下の実績をあげた。DNA修復酵素(PARP1)がDNA損傷の修復を行うだけでなく修復を阻害する作用もあり、その阻害をもう1つのDNA修復酵素、XRCC1が抑制することを解明した(論文1)。論文4は核酸化合物による変異原性の作用機序を解明し、論文7ではホルマリンがDNA-タンパク間架橋を作ることによる変異原性を特異的に調べる方法を開発した。論文8はこれまで未知だったDNA修復経路を発見した。これらの成果は、DNA修復酵素欠損TK6株を使い、変異原性の作用機序を分類分けする手法を開発するのに貢献する。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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