研究課題/領域番号 |
16H06310
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 照之 東京大学, 地震研究所, 教授 (80134633)
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研究分担者 |
寺田 幸博 高知工業高等専門学校, 客員教授 (30442479)
田所 敬一 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70324390)
二村 彰 弓削商船高等専門学校, 商船学科, 准教授 (90332080)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 津波 / 海底地殻変動 / GNSSブイ / 防災 |
研究実績の概要 |
要素技術開発のための実験から開始した.実験は8月下旬に弓削商船高専所有の弓削丸を用いて行った.船上にETS-VIII(きく8号)との通信用に,ジンバル付きとジンバルなしの平面アンテナを設置した.また,ETS-VIII運用終了後に使用する商用衛星(Thuraya)との通信のための受動ならびに能動アンテナも設置した.これらによって船の動揺や船体によるアンテナ掩蔽,データ取得効率などの効果を確認するための基礎資料を得た.加えて,船の動揺に伴うフェージング調査のデータを取得し,将来の通信衛星の仕様策定を行う準備をした.続いて,2月上旬に黒潮牧場18号ブイの周辺,半径約0.75海里の円周上4ヵ所にて海中音速の測定を行った.その結果,ほぼ東西に流れる黒潮による影響で,南北方向に最大で±3.6m/sの不均質があることが分かり,次年度以降の海底地殻変動精密測位の重要な基礎資料が得られた. 観測システムは,データ送受信のための基地局を高知県仁淀川町に,また高知県黒潮牧場18号ブイにGNSS機器等の機材一式を搭載して構築し,海面変動監視のための測位を開始した.地上局で補正情報を生成して,衛星を介してブイに送り,ブイ上で精密単独測位を行って結果を陸側に伝送するという双方向の衛星通信には商用衛星を用いた.しかし,開始からほどなくして記録が停止した.原因を調査したところ,通信衛星用のアンテナの消費電力が当初想定よりも大きく,電圧低下による機能停止と判断された.解決策としてブイ上の電力供給量を増やす必要があり,追加のソーラーシステムを整えて次年度の測位機能回復に備えることとなった. 本研究に協力いただいている地域への研究成果の還元を意識して,仁淀川町町民向けに「地震と津波を考える夕べ」と題した講演会を仁淀川町の協力の下に開催した.これらの活動や研究内容について,新聞で7回,NHKで1回の報道があった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度はブイ観測の準備・開始と衛星通信の高機能化が最重要課題であった.このため,GNSS受信機システムは精密単独測位やPVD法を組み込んだ特別仕様のものを製作し,防水性を確保した電源・計測システムと共に高知県足摺岬沖のブイに搭載した.また,データ公開用サーバは災害発生時に津波被害を受けない山間部の仁淀川町に設置し,データ伝送用衛星通信システムとして商用の通信衛星(Thuraya)を利用した. ブイを用いた観測システムの構築に加えて,弓削商船高専の練習船弓削丸を用いて通信アンテナの機能向上のための要素実験,将来の課題として複数ブイを運用する場合に必須と考えられる回線制御技術について検討するためのETS-VIIIを用いた基礎データの収集,及び海底地殻変動観測のために不可欠の塩分濃度と温度分布の計測実験を行った. 平成29年度の最重要課題になる海底地殻変動観測のための準備調整として,通信衛星経由でデータ伝送を行う場合のデータ量の圧縮技術及び音響測距による音波の伝播時間を自動計算する手法の新たなアルゴリズムの開発を行った.また,GNSSブイの多機能化に向けて気象学・電離層研究への応用の検討を行った. ブイへの観測機器搭載と弓削丸を用いた要素実験は順調に推移した.しかしながら,ブイ搭載機器の電力見積に誤りがあり,蓄電池能力に不足が生じた.このため,追加の太陽電池,蓄電池を購入して,電力不足を解消しようとしていたところ,ブイ作業を請け負わせていた業者が,別の箇所で設置していたGNSS波浪計ブイの点検作業中に作業員一名が亡くなるという事故を引き起こした.このため,業者が原因究明と再発防止策をとるまで業務を自粛することとなり,本プロジェクトも海上作業ができない事態となっている.このため,当初予定であった,当該年度中のGNSSブイの精密測位の連続運転ができない状況となっている.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に発生した事故の余波が今年度も継続しているが,6月頃には何らかのめどがつく見込みであり,それを待ってブイ作業を再開する予定である.もし,当該業務を請け負っている業者が作業を開始できないときに備え,別の業者に作業を依頼するなど,本研究への影響を最小限にとどめることを考えている.なお,今年度の当初作業は海底地殻変動関係の機器設置など,事故とは関係のない作業が予定されているので,研究全体への事故の影響はそれほど大きなものではないと考えている. 海底地殻変動観測実験では,音響測距用の海底局3台を新たに導入し,ブイ直下の海底に設置する.ブイ上からの音響測距試験を実施し,音響測距が可能であること,前年度に開発したアルゴリズムが正常に働くことを実証する.また,音響測距結果とブイのGPS測位と姿勢測定結果を統合して自動で海底局位置を決定する新たなアルゴリズムを開発し,海底局の位置決定が可能であることを実証する.音響データはブイ上に置かれたPCにも格納し,オフラインでデータを収集して後処理を行い,従来の手法での解析も行って精度を比較検討する.これには弓削丸を用い,CTDプロファイル観測も合わせて実施することによって,海底測位の高精度化を図る予定である. 気象学・電離層研究への応用においては,GNSSデータから可降水量を抽出する解析を行い,周囲の地上GNSS観測点,衛星搭載マイクロ波放射計による観測との比較を行う.また,GNSSデータからTECの値を抽出し全球モデルへ入力することで,海上TEC情報がどの程度モデル精度の向上に寄与するかを検討する. 平成30年度~平成32年度においては,構築した観測システムの継続的運用と長期利用における課題の抽出・解決を行う.また,最終年度には,研究成果をとりまとめ,西太平洋におけるGNSSブイアレイ展開の留意事項を明確にしていく予定である.
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備考 |
現在,新たなWebへの移行を準備中
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