研究課題
(1)ステルス用最適化ペプチドの作製:HBV Pre-S2領域の中程由来にポリアルブミン受容体領域(peptide 2; TFHQALLDPRVRGLFPA(18アミノ酸残基))を同定し、同ペプチドを提示する直径100nm前後のナノ粒子が、In vitroにおいてアルブミン共存下でマウス肝臓由来マクロファージ(クッパー細胞)の取り込みを回避する能力があることを証明した。また、In vivo(マウス)においても、RESの多い臓器を回避し、標的組織に集積しやすい性質を有することを示した。これは、従来法のPEG修飾の代替となるウイルスが本来有するステルス活性発現機構であり、大きな発見である。(2)細胞内侵入機構の解明:HBV Pre-S1領域のN末端付近由来の膜透過ドメイン(NPLGFFPDHQLDPAFG)を先に同定した。また、酸性環境の後期エンドソームからのナノ粒子脱出に重要であることを示した。現在、そのPre-S1周辺配列と膜付近でどのように協調して機能しているか解析を進めている。(3)組織・細胞特異的Affibodyの作製:種々の培養細胞および動物組織を用いて、ロイシンジッパーを有する堅固な構造体Helix-Loop-Helix(HLH)型Affibodyのスクリーニングを行って、極めて高い特異性を示すAffibody候補の単離を行っている。また、HBV Pre-S1領域にHBV標的臓器であるヒト肝臓表面(ヘパリン結合型プロテオグリカン)と最初に結合する部位があることを見出した。これは、ウイルスの本来有する標的化機構は、緩い親和性でトライアンドエラーを繰り返して標的近傍まで接近し、高度な親和性により最終的に結合することを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
「(1)ステルス用最適化ペプチドの作製」については、予定通り進捗している。現在成果を投稿中である。「(2)細胞内侵入機構の解明」については、予定通りに進捗している。DDS用基剤に適した新しい膜透過ペプチドの設計にも成功しており、投稿準備中である。「(3)組織・細胞特異的Affibodyの作製」が少し遅れ気味であるが、全く新しい細胞及び組織認識機構(ヘパリン結合型プロテオグリカン)を発見し、現在、投稿中である。
(1)ステルス機構の解明:今年度に引き続きpeptide2(変異体含)-アルブミン間相互作用とRES回避能との関係を構造に着目して解析する(普遍的なRES回避機構解明を期待)。(2)細胞質内侵入機構の解明:今年度に引き続きHBV(BNC)の細胞質内侵入を引き起こす膜融合ドメインの新規な膜融合機構を明らかにする(新規なエンベロープ型ウイルス脱殻機構解明を期待)。(3)リポソーム上への精密整列化提示と高速AFMによる評価:最もポピュラーなナノキャリアであるリポソーム表層に今年度に同定した(I)Affibody、(II)ステルス化ペプチド、(III)細胞質内侵入ペプチドを、独自開発の精密整列化足場分子(例えばBNCのS領域)や化学的な分子整列化法を使用してリポソーム表層にペプチドを提示し、高速AFMによるリアルタイム動態解析を行う。(4)3機能ペプチド提示リポソームのIn vitro評価:ヒト肝臓由来細胞認識Affibodyと2機能ペプチド(ステルス、細胞内侵入)を提示したリポソームのIn vitroでの標的化能、細胞内動態、エンドソーム脱出能を明らかにする。そして、薬剤、遺伝子双方に同リポソームを最適化する。(5)3機能ペプチドを提示したリポソームのIn vivo評価を行う。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 1件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 9件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Journal of Nanobiotechnology
巻: 14 ページ: 74
10.1186/s12951-016-0226-5
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 19934
10.1038/srep19934
Biotechnology and Bioengineering
巻: 113 ページ: 1796~1804
10.1002/bit.25948
Acta Biomaterialia
巻: 35 ページ: 238~247
10.1016/j.actbio.2016.02.010
Biotechnology Journal
巻: 11 ページ: 805~813
10.1002/biot.201500443
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 474 ページ: 406~412
10.1016/j.bbrc.2016.04.125
Virology
巻: 497 ページ: 23~32
10.1016/j.virol.2016.06.024
Glycobiology
巻: 26 ページ: 1180~1189
10.1093/glycob/cww067
バイオサイエンスとバイオインダストリー
巻: 74 ページ: 30~33
Drug Delivery Systems
巻: 31 ページ: 35~43
日本生物工学会誌
巻: 94 ページ: 497
World Journal of Gastroenterology
巻: 22 ページ: 8489~8489
10.3748/wjg.v22.i38.8489
ファインケミカル
巻: 45 ページ: 18~24
http://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/smb/index.html