研究課題/領域番号 |
16H06314
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
黒田 俊一 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (60263406)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 薬物送達システム |
研究実績の概要 |
(1)標的化能:IgG、IgM、アフィボディ以外にも、DNAアプタマー、レクチン、サイトカイン受容体などを提示して、精密な標的化が行えることを見出した。 (2)ステルス能:血液中の重合アルブミンを外側にリクルーティングすることにより、高度なステルス能を獲得することから、アルブミンを積極的に表層に固定したリポソームも同様に高いステルス能を獲得することを見出した。 (3)細胞内侵入能:B型肝炎ウイルスは、高親和性受容体であるNTCPとの結合が感染成立に必須であるが、その結合前に低親和性受容体であるHSPGと結合する事を明らかにし、その結合部位をHBV外皮Lタンパク質のN末端側30-42に同定した。多くのウイルスが、効率よく標的細胞を認識するために、まずは低親和性分子で探索し、その後、高親和性分子で強固に結合する2段構えの機構を有することを見出した。この戦略は、今後のDDSナノキャリア開発にとり非常に重要な発見である。 (4)リポソーム上での3機能ペプチドの再構成:様々な機能ペプチドをDDSナノキャリア上に固定する際に、方向性を厳密に揃えることは非常に大切である。今回は、ナノカプセル状であった足場分子Lタンパク質(BNCの構成成分)を1分子化し、二次元膜に展開する事に成功した。その結果、かさ高い足場分子を使わずに、任意の機能ペプチドの配向性を揃えることが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
HBVをモデルとして、DDSナノキャリアに必要な機能を解析し、標的化能、ステルス能、細胞内侵入能、さらに細胞質内移行能に必要な部位を同定した。また、その作用機作も明らかにした。さらに、DDSナノキャリアに提示する各種標的化分子の開発、その標的化分子の配向性を厳密に揃える足場技術も開発できた。これらの成果は、当初の予想を超えるものであり、論文数も大きく増えている。
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今後の研究の推進方策 |
HBVおよびBNCの解析で、予想以上の成果が得られたため、BNC以外のDDSナノキャリアへの機能ペプチドの搭載などが遅れ気味ではあるが、既に、実験開始している物も多く、最終年度内に当初の目標は達成できると考えている。
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