研究課題/領域番号 |
16H06317
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岡本 仁 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (40183769)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 社会的闘争 / 手綱核 / ゼブラフィッシュ / マウス / 勝者と敗者 / 脚間核 / セロトニン / 縫線核 |
研究実績の概要 |
全ての脊椎動物は、より大きい縄張りや、よりよい生殖パートナー等を巡って、同種同士で闘う。このような社会的闘争は、相手の抹殺によってではなく、戦いの当事者のどちらかが降参して、当事者同士がお互いの優劣関係を受け入れたときに終息する。これまで、このような社会的闘争の終息がどのように制御されているのかは、全く分かっていなかった。我々はこれまでの研究から、脳の手綱核から脚間核へと繋がる隣接し合った二つの神経回路が、動物種を越えてこの過程に深く関わっているという手掛りを得た。本研究では、この発見を発展させて、脊椎動物の社会的闘争での優劣決定の仕組みを明らかにすることを目指し、研究を進めてきた。
平成31年度までの研究から、ゼブラフィッシュでは、背側手綱核の内側亜核から腹側脚間核への神経結合が、脚間核の神経細胞での、α7ニコチン型アセチルコリン受容体の活性化に依存するカルシウム透過性AMPA型グルタミン酸受容体の発現増加によることが明らかになった。
平成32(令和1年)の研究で、ゼブラフィッシュは、十字迷路実験で、アームの先に見える色という外的情報に基づいても、右に曲がるか左に曲がるかという内的情報に基づいても、正しい判断をして、餌を獲得できる。内的情報に基づいて行動しているときに、ルールを変えて内的情報に基づくことが正しい様に、タスクの環境を変えても、素早く順応することができる。勝者の回路を不活化した魚は、内的条件に基づくはんだん飲みができなくなることが明らかになった。このことから、勝者の回路が、動物が外的刺激に注目することを促す働きがあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成32年度は、これまでに蓄積された結果を論文として発表するために、3報を投稿した。 令和2年の時点で、1報は受理され、1報は改訂中である。 さらにもう1報は、再投稿を準備している。 これらにくわえて、手綱核脚間核神経経路に関して、動物の注意を外界に向けるか自分自身の体に向けるかのスイッチボードとしてはたらくという、新しい結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の終了までに、すべての結果を論文として発表する。 さらに、勝者の回路が、外界よりも自分自身に注意をむけるのに作用するのか、その意義と仕組みを解明する。
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