研究課題
本年度は、提案時の計画通り完全ゼロ磁場下において、窒素と二つの炭素同位体の3核子による量子誤り訂正を行った。パリティチェックと同じ要領で、3つのメモリーで一つの論理メモリーを構成し、信号ビットのエラーが二つの補助ビットに同時に反映することを検知しエラーを訂正した。これには、提案者独自の縮退スピンに対する幾何学的量子操作を利用した。このためには、メモリー操作に合わせ、ビット反転エラーを効率100%で判別する量子非破壊シングルショット測定が不可欠であり、まずはこの実現を行った。実験で得られたシングルショット測定の忠実度は、窒素核子でで87%、炭素同位体核子で99.6%であった。本技術を応用し、窒素と二つの炭素同位体の3核子による量子誤り訂正を行った実験で得られた誤り訂正の忠実度は、窒素核子へのビット反転誤りの場合で75.4%、位相反転誤りの場合で74.6%であった。本忠実度は小さく見えるが、実際には誤りが100%の場合でもこの忠実度で誤り訂正が行えるものであり、誤り率が10%以上の場合に効果を発揮する。無磁場下でこのような誤り訂正を実現することは、非常に困難であり、世界初の成果である。磁場の印加が許されない超伝導量子ビットとの融合技術などでその真価を発揮する。
1: 当初の計画以上に進展している
提案書提出時に計画した研究内容の全てを1年前倒しで達成した。
終了前年度申請を行い、本課題をさらに発展させた研究課題である「ダイヤモンド量子ストレージにおける万能量子メディア変換技術の研究」に挑戦する。以下がその研究概要である。光、超伝導、シリコン、冷却原子といった様々な量子系による万能量子コンピュータが研究されているが、集積された多数の量子ビットの個別制御が難しいという致命的な問題がある。本研究は安定した量子状態を実現するダイヤモンドのNV中心をプラットフォームとし、レーザ光で各量子ビットにアクセスする手法により、この問題を根本的に解決する。すなわち、30nm間隔という高密度に集積されたNV中心にレーザ光を照射することにより、独自に考案した幾何学量子ビットの補助準位を個別に周波数シフト(光シフト)させる。これにマイクロ波を照射すると、これに共鳴した周波数シフトを示すNV中心だけが選択的かつ動的にホロノミック量子ゲート操作される。さらに隣接NV間の磁気双極子相互作用を利用すると、二量子ゲートが得られ、多量子ビットの任意の操作が可能な万能量子ゲートに発展する。これにより、100万個程度の集積量子ビットへの個別の書き込み、ゲート操作、読み出しを実配線なしに可能とする。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (53件) (うち国際学会 7件、 招待講演 18件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 59 ページ: 10903 1-5
10.7567/1347-4065/ab5b77
Communications Physics
巻: 2 ページ: 74
10.1038/s42005-019-0158-0
Phys. Rev. Applied 12
巻: 12 ページ: 51001
10.1103/PhysRevApplied.12.051001
Diamond and Related Materials
巻: 93 ページ: 105-130
10.1016/j.diamond.2019.01.017
巻: 58 ページ: 045503 1-6
10.7567/1347-4065/ab0541
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 5786 1-7
10.1038/s41598-019-42314-7
Nano Letters
巻: 19 ページ: 4543-4550
10.1021/acs.nanolett.9b01402
Nature Communications
巻: 10 ページ: 2664 1-6
10.1038/s41467-019-10529-x
巻: 19 ページ: 6681-6686
10.1021/acs.nanolett.9b02993
Physica Status Solidi a-Applications and Materials Science
巻: 216 ページ: 1900247 1-7
10.1002/pssa.201900247
http://kosaka-lab.ynu.ac.jp/