研究課題/領域番号 |
16H06327
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菅原 康弘 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40206404)
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研究分担者 |
李 艶君 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50379137)
内藤 賀公 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90362665)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 走査型プローブ顕微鏡 |
研究実績の概要 |
まず、アルミナ(0001)表面上に構築されたパラジウムPdのナノ構造体への一酸化炭素CO分子の吸着現象を検討した。その結果、CO分子が、Pdナノ構造体の周縁付近に吸着する現象を高分解能に観察することに成功した。また、その吸着に伴い、ナノ構造体全体の接触電位差が減少するとともに、CO分子の吸着位置において局所的に接触電位差が増加した。この結果は、Pdナノ構造体へのCO分子吸着に伴い、ナノ構造体の電子がCO分子に移動したことを示唆している。 また、ナノ構造体に吸着したガス分子の触媒表面の動的過程を解明するため、表面の構造と電荷状態を高速に原子分解能で観察できる原子間力顕微鏡/ケルビンプローブ力顕微鏡(AFM/KPFM)を開発した。表面の電荷状態の測定では、探針・試料間に交流バイアス電圧を印加し、カンチレバーの周波数シフトに現れる変調成分を捉えてイメージングを行うが、高速性に大きな問題があった。そこで、交流バイアス電圧の1周期ごとの信号成分から電荷状態を高感度・高速に測定できるように、離散フーリエ変換技術に基づく高速・高感度な静電気力検出回路とカルマンフィルターを用いた高速電位フィードバック回路を開発した。表面構造と電荷状態を原子分解能で高速(1画像当たり10秒)に取得できるようになった。 さらに、ナノ構造体に吸着したガス分子の振動周波数(吸着種とその結合状態に関係)が、ナノ構造体の中央頂上部分と周縁部分とで、どのように変化するかを明らかにすることを予定している。吸着ガス分子の振動状態(ラマン振動)を高感度・高分解能に測定するため、分子への光照射により誘起される双極子と、これにより原子間力顕微鏡の金属探針(力センサー)に誘起される双極子との間の双極子・双極子相互作用を力として高感度に検出できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に示すように、本研究目標を達成するための具体的な研究計画が順調に進展しており、ほぼ予定通りの成果が得られると期待できる。 1.ニッケルアルミニウムNiAlの(110)表面を熱酸化させ、絶縁体表面であるアルミナ(0001)表面を作製することに成功した。この表面を原子間力顕微鏡で高分解能に観察した結果、原子レベルで平坦なテラス、ドメイン境界の直線欠陥構造やジグザグ欠陥構造、ステップ構造など、様々な欠陥構造を観察することができた。 2.アルミナ)表面上に構築されたパラジウムPdのナノ構造体の構造と電荷状態について検討した。ナノ構造体は、ドメイン境界の直線欠陥やジグザグ欠陥、ステップに吸着しやすいことが分かった。他方、ナノ構造体と探針との間の接触電位差は、ジグザグ欠陥に吸着したナノ構造体、直線欠陥に吸着したナノ構造体、ステップに吸着したナノ構造体、テラスに吸着したナノ構造体の順番で大きな値を示した。 3.アルミナ表面上に構築されたPdのナノ構造体への一酸化炭素CO分子の吸着現象を検討した。その結果、CO分子が、Pdナノ構造体の周縁付近に吸着する現象を原子分解能で観察することに成功した。また、その吸着に伴い、ナノ構造体全体の接触電位差が減少するとともに、CO分子の吸着位置において局所的に接触電位差が増加した。この結果は、Pdナノ構造体へのCO分子吸着に伴い、ナノ構造体の電子がCO分子に移動したことを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策としては、まず、ナノ構造体の局所電荷状態への表面欠陥の影響を解明する。次に、反応ガス中におけるナノ構造体の局所電荷状態を解明する。また、ナノ構造体表面上の吸着ガスの局所吸着状態を解明する。最後に、第一原理計算による解析と触媒化学的な考察を加えて、絶縁体表面上でのナノ構造体の触媒メカニズムを解明する。研究を遂行する上で大きな問題点は生じておらず、当初の研究計画に従って研究を推進すれば、研究目的を達成できると考えている。
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