研究課題/領域番号 |
16H06328
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 輝夫 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30251474)
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研究分担者 |
PLESSY Charles 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 客員研究員 (60391984)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 単一細胞解析 / トランスクリプトーム解析 / 誘電泳動 |
研究実績の概要 |
本研究では、マイクロ流体アプローチによる単一細胞捕捉・解析デバイスとトランスクリプトーム解析手法とを組み合わせ、それらをより一層発展させることによって、1細胞トランスクリプトーム解析法の確立を目指す。具体的には、多数の単一細胞操作・解析を行うことが可能なEMA(Electroactive Microwell Array)と少量サンプルでのトランスクリプトーム解析が可能なnanoCAGE法とを融合することにより、1細胞トランスクリプトーム解析法を実現する。 平成29年度では、1細胞解析を医療への応用として、安定的に細胞を保持できるEMAB(EMA with barrier)を開発し、液状化細胞診法の検討を行った。既存のEMAでは、誘電泳動を切ると捕捉された細胞が流れ出してしまう問題があったため、導電率が高い細胞解析用試薬をデバイス内に導入することが困難であった。この課題に対して、各マイクロウェルの後ろに微小壁を形成することで捕捉した細胞を安定的に保持できるEMABを開発した。EMABでは、誘電泳動を切ったときに、捕捉された細胞が微小壁に引っかかることで、細胞を安定的に保持することが可能である。EMABを用いた実証実験として、子宮頸癌細胞株であるHeLa細胞を用いた免疫染色を行った。具体的には、臨床応用を視野にHPV感染マーカーとして子宮頸部前癌病変の検出で利用されているp16と、増殖マーカーであるKi67の2重染色を、EMABを用いて行った。p16/Ki67マーカーは子宮頸部病変診断において臨床応用されており、細胞診の補助診断として用いられている。HeLa細胞をEMABに捕捉した後、免疫染色用の様々な試薬をデバイスへ順番に導入することで、1細胞捕捉・細胞固定・透過処理・染色の一連のプロセスをデバイス上で行うことが可能になり、1細胞免疫染色を高精度で実現することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、index配列導入法を確立するためディスペンサーを用いたスポッティング方法を構想した。しかし、Index配列を担持した温度感応性ゲルは粘度が高いため、ディスペンサーを用いて基板上にスポッティングするのは困難であることが判明した。そのため研究方法を見直し、ゲル組成の最適化、インクジェットシステムの検討が必要であるため、研究に若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
【EMAを用いた臨床検体の解析】改良したEMAを用いて子宮頸部上皮組織の臨床検体の解析を行う。扁平状の広い細胞質に小さな核を有する子宮頸部の上皮細胞を、改良したEMAを用いて捕捉する。その後、細胞内のKi67タンパク(細胞増殖能を示すマーカーで、悪性度の評価などに用いられる)とp16タンパク(ハイリスク型HPVの持続感染により過剰発現する)の発現を免疫染色で解析し、EMAを用いた子宮頸がん診断への応用の可能性を検討する。 【スポッティング方法によるindex配列導入法の検討】スポッティング方法では、index配列を含むTSオリゴを担持した温度感応性ゲルと、index配列を含むRTプライマーを担持したゲルを、インクジェットディスペンサーを用いてPDMSマイクロウェルにスポッティングすることでindex配列を導入する。インクジェットディスペンサーを用いて温度感応性ゲルを効率良くスポッティングするため、ゲル組成・オリゴ濃度の最適化を行う。 【picoCAGEプロトコルの改良】1細胞からの微量なmRNAを用いてCAGE反応を行うための最適なRTプライマーとTSオリゴの濃度を検討する。具体的には、精製された微量なmRNAを、様々な濃度のRTプライマーとTSオリゴを用いてCAGE反応を行い、合成されたcDNA量や配列を比較することで最適化な濃度を確認する。
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