研究課題/領域番号 |
16H06330
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
白石 誠司 京都大学, 工学研究科, 教授 (30397682)
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研究分担者 |
安藤 裕一郎 京都大学, 工学研究科, 特定准教授 (50618361)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | スピンカレント / 半導体 / 外場制御 |
研究実績の概要 |
29年度は、前年度に酸化物2次元電子系における室温スピン輸送を実証するツールとしてドイツの共同研究グループと開発したブロードバンド強磁性共鳴法を用いてシリコン中のスピン緩和の大小を定量的かつ迅速に測定することに成功するとともに、シリコンスピンバルブ中のスピン緩和機構を運動量緩和の観点から整理しなおし、運動量緩和とスピン緩和の比を定量的に決定することに成功した。これらの成果はApplied Physics Letters誌に掲載し、更に研究を遂行する学生の受賞(複数)にも繋がった。他に受賞関連として代表者が文部科学大臣表彰を、本研究課題推進の基盤となった成果によって受けることができた。
またスペインのグループと共同でトポロジカル絶縁体における相反性のある電気的スピン変換の実現に初めて成功し、論文投稿直前の段階にある。29年度最大の発見は金属超薄膜に強力な外部電場を印加することで、その伝導度を連続的に変調できることを発見したことにある。これは金属と半導体は物性的に明瞭に区別でき、一方の材料を他方の材料のような物性を備えさせることは困難であるという従来理解を大きく覆す点で極めて意義深い(金属も半導体のように振る舞える、ということ)。この技術を用いて外場によるスピン軌道相互作用の制御と非線型なスピンカレント=電流変換の実現など、独自の境地を開拓しつつあり、論文も投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文出版自体は例年並の水準であるが、いくつかの大きな、既存の概念や理解を覆すような革新的または卓越した成果があがっている。これらの点は想定以上に研究はうまく遂行されている、と言える。また酸化物に次ぐ別の2次元電子系におけるスピンカレント伝播も徐々にゴールが見えてきた。計画に挙げている原子膜半導体やスピンカレント回路システムの構築などがやや遅れているので総合的に(2)と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き現在のペースで研究を推進し、同時にドイツ・スペインとの国際共同研究も推進していく。今年度は、特に昨年度発見した新しいスピンカレント輸送・変換の外場制御を切り口に、更に新しい物理を見出すことを意識しつつ、進行中の2次元電子系に関する研究や、スピンカレント回路素子の開発など基礎から応用までバランスよく研究を推進していくことを目指す。
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