研究課題/領域番号 |
16H06331
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 一成 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (40311435)
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研究分担者 |
小鍋 哲 法政大学, 生命科学部, 准教授 (40535506)
北浦 良 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (50394903)
岡田 晋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70302388)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 原子層物質 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / バレースピン / フォトニクス |
研究実績の概要 |
[1] 原子層物質の作製技術の確立:本年度、計画前期において成長技術や条件を確立したMOCVD、CVD法を用い新奇な原子層ヘテロ構造の作製を進めた。それにより、原子層二次元面内で3 nmの幅を有するヘテロ構造を作製する事に成功し、原理的には、二次面内での超格子構造などを作製することか可能となり研究が大きく進展した。さらに、機械剥離法で作製した原子層物質においても、h-BNで保護し作製条件を最適化する事で、高品質な半導体原子層構造を作製することが可能となった。 [2] バレースピン検出とコヒーレント制御:これまでまでの研究において、電子と正孔からなる励起子についてバレースピン緩和時間が数10ピコ秒程度と短いものの、クーロン相互作用のスクリーニングの外部変調により、バレースピン分極を制御することに成功している。本年度は、複数の電子と正孔の束縛状態である荷電励起(トリオン)について、複数の異なる実験から、バレースピン分極が低温で1ナノ秒と非常に長い時間保持されていることが明らかとなった。現在、この荷電励起子(トリオン)について、そのバレースピン分極を制御することを念頭に入れるとともに、継続して、バレースピン分極のコヒーレント制御に向けた研究を進めている。また、半導体原子層物質と層状磁性体との原子層ヘテロ構造についても、バレースピン分極の制御などに成功している。 [3] バレースピンフォトニクスデバイスの実現:バレースピンフォトニクスに向けた基盤技術として、バレースピン制御を利用しその情報を外部に出力するデバイスが必要となる。そのため、原子層物質と微小共振器を組み合わせ、より低い閾値で高効率に光と共振器モードを強く結合させ、高輝度な誘導放出(レーザー)に向けた研究を進めた。光ポンピングの条件では、微小共振器に閉じ込められたモードにより、誘導放出を観測することに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、バレーとスピン自由度が結合した物性を発現しうる原子層物質を舞台に、特異な量子光学現象の解明を通してバレースピンの本質を理解する事、さらに、その知見を最大限活用しバレースピン制御を目指している。本年度の研究において「バレースピンフォトニクス」を実現するために必要な課題である、バレースピン分極の長時間保持に対して、荷電励起子(トリオン)では、低温では1ナノ秒という非常に長時間バレースピン分極が維持されているとを明らかにした。さらに、半導体原子層物質と磁性体でのバレースピン分極の制御、半導体原子層物質での微小共振器での研究など順調に研究成果が出ていることもあり、上記の判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
[1] 原子層物質の作製技術:本年度、原子層物質・ヘテロ構造の作製において、高品質かつ特異な物性や機能発現が期待できる新たな系において、研究の進捗が見られた。こられの特徴を生かしながら、バレースピンが関与した量子光学現象に関する研究を進める。 [2] バレースピン検出とコヒーレント制御:新たなアプローチである半導体原子層物質と層状磁性体との原子層ヘテロ構造について、バレースピン分極の制御などに成功しており、こられの一連の研究をさらに発展させる予定である。これに加え、荷電励起子(トリオン)のバレースピン分極制御やコヒーレント制御に向けた研究を進める。 [3] バレースピンフォトニクスデバイスの実現:原子層物質と微小共振器により、より低い閾値で高効率に光と共振器モードを強く結合させ、高輝度な誘導放出(レーザー)に向けた研究を進める。特に、未だ報告がなされていない電流注入による微小共振器への閉じ込めモードの観測と、誘導放出(レーザー)に向けた研究を推進する。
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