研究課題/領域番号 |
16H06333
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
末永 和知 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 首席研究員 (00357253)
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研究分担者 |
千賀 亮典 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (80713221)
Lin YungChang 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (90772244)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | EELS / STEM |
研究実績の概要 |
ハードウェア開発:初年度(2016年度)に、本研究の核となる電子線分光器および検出器の基本構成を導入した。その後のさらなるシンチレータとCCD検出器の最適化に取り組んでいる。また高次収差を補正して、スペクトルの高精度化を行うことができる。新型電子銃開発、試料観察環境制御などは2019年度までに終了する見込みである。
貴金属(重元素)単原子の検出:従来EELS法は、内殻電子に空き準位のある遷移金属の高感度検出に用いられることが多かった。それに反して希ガスや貴金属など空き準位DOSが十分大きくない元素にたいしては高感度分析は不得手であった。今回は、この欠点を克服するために、電子顕微鏡の加速電圧や実験条件を最適化し、SN比の高いスペクトルの取得に務めた。これにより貴金属単原子のEELS検出に成功した。具体的には、制御されたMgOクラスター表面上に担持したルテニウム(Ru)など金属の単原子検出に成功した。現在論文投稿準備中である。 モノクロメータを用いた実験により、光学領域や振動領域のスペクトル取得が可能になった。現在は数nmから数十nm程度の空間分解能でしか測定できていないが、これを単原子レベルにおいてまで測定が可能になるように検討実験および理論的考察を行なっている。途中経過は3報の論文として既に報告ずみである。 真空度向上と振動ノイズ:観察時の試料環境制御のために顕微鏡カラム内の真空度向上を目標の一つとしていた。対物レンズ付近のoリングを金属シールに替えることで真空度向上を図った。一桁以上の真空度向上を一旦は実現したが、金属シールにすることで顕微鏡の固有振動数が変化し、電子顕微鏡の振動ノイズ問題が新たに生じた。ソフトメタルを使った新しい真空シールを現在テストしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、2年目と3年目に導入予定であった電子線分光器および検出器を、予算前倒しで一年目に同時に調達した。これはプロトタイプ(現行モデル)を初年度に導入し、その後シンチレータや検出器の改造を順次に行うほうが、効率よく研究が進められると判断したためである。 2016年度に導入した低加速電子顕微鏡対応電子線分光器において、検出器に付随するシンチレータの最適化に取り組んでいる。これまでに3種類のシンチレータを試験運用した。また高速取り込みのためにCCD検出器からCMOS検出器に変更したが、試験的に導入したCMOS検出器は読み出しノイズが大きすぎたため、採用を一旦見送り現在は再度CCD検出器を試用中である。現在新たなCMOS検出器の導入は2018年度末を予定している。 雇用を予定していたポスドクの来日が遅れたため、各年度の人件費に多少の変動が生じた。ポスドクは2017年度以降、継続的に1~2名雇用している。
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今後の研究の推進方策 |
高輝度電子銃の開発:新型電子銃開発も提案時の研究計画に含まれており、EELS高度化に重要な要素である。さらに高輝度の電子線を発生させるために、電極構造の改造を行ったが、開発途中に放電による電子銃tipの破壊が計3回起こった。現在、電子線引き出し部電極の構造を再設計し、工場で再調整中。 分光器用検出器の選択:当初は高速かつ高感度を両立させるシンチレータを導入予定であったが、各種シンチレータをテストした結果両立するのは難しいことがわかった。現在は用途に応じて高速用と高感度用シンチレータの交互使用を検討中。引き続き最適なシンチレータを探索している。
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