研究課題/領域番号 |
16H06342
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
米徳 大輔 金沢大学, 数物科学系, 教授 (40345608)
|
研究分担者 |
久徳 浩太郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (30757125)
|
研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
|
キーワード | 重力波 / X線 / 人工衛星 / ブラックホール / 検出器開発 |
研究実績の概要 |
重力波を発生する天体からの突発的なX線放射を観測することを目的に、1から20 keV帯域で約2ステラジアンの広視野を有するX線撮像検出器のフライトハードウェアを完成させた。独自に開発した1次元のシリコンストリップ検出器とアナログ集積回路を組み合わせたセンサー基板と、そこからのデジタル信号を処理し、かつ衛星側との電気的インターフェースを担うコントロール基板、さらに1次元の符号化マスクを備えた検出器筐体を完成させた。イメージプロセッサ機能とX線強度変化を担うFPGAのアルゴリズムを構築し、オンボードソフトウェアの基本的な部分を開発した。 金沢大学衛星の熱構造モデルに搭載した振動試験を実施し、構造解析の結果と比較することで定量的に予想通りの振動レベルであることを確認し、試験後の機能試験もクリアしている。また、検出器単体での熱真空試験を実施したが、検出器の温度が0℃を上回る可能性が見出されたことから、検出器筐体に対して銅製の熱リンクを取り付けることで、常時マイナス6℃以下を達成できるように調整した。 金沢大学衛星の熱構造モデルに対する振動試験・熱真空試験の結果から、設計の成立性を確認することができたため、フライトモデルの仕様を確定し、次年度以降に製造を開始できるようになった。 また、衛星バス系のコンポーネントして、リアクションホイールの単体駆動試験、星センサーを用いて夜空を観測することによる姿勢パラメータの取得、磁気トルカの制御など、姿勢制御に関する単体ソフトウェアを開発してきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画として掲げていた(1)広視野X線撮像検出器のフライトハードウェアの完成、(2)FPGAおよびCPUソフトウェアの開発、(3)検出器に対する環境試験の実施、(4)衛星熱構造モデルに対する環境試験の実施、そして(5)姿勢制御コンポーネントの試験については順調に進展している。一方で、検出器と衛星バスとの通信インターフェース部分に関しては、衛星バス側の搭載コンピュータの開発が遅延したことで、接続試験を行うまでは到達できなかった。しかしながら、データ・コマンドの仕様を決定することができ、検出器側のソフトウェアには通信機能を実装できている。実際の接続試験は次年度に実施する予定である。 星センサーについては、平成28年度に購入する予定であったが、納期が極めて長い事が判明したため本研究費を繰り越し、平成29年度に購入し試験を実施することとなった。実際の星(星座)を観測することで、予想通りの姿勢パラメータを取得することができ、十分に性能を評価することができている。 また、衛星バス部の姿勢制御に関連するコンポーネントの単体試験を実施し、制御方法やソフトウェアの根幹は開発することができている。今後はセンサーからの情報に基づいた制御アルゴリズムを構築していくことになる。
|
今後の研究の推進方策 |
広視野X線撮像検出器のFPGAロジックとCPUソフトウェアのデバッグを行い、観測機器としての機能を十分に評価する必要がある。特に低エネルギーのX線を照射することで検出器のエネルギー応答を確認すること、平行度の高いX線ビームラインを用いた撮像機能の検証、モンテカルロシミュレータを用いた応答関数の構築などが検出器の試験項目となる。また、衛星バスとの通信インターフェース部についても十分な試験を実施し、データ・コマンドが適切にやりとりできることを検証する必要がある。 今年度の研究で衛星熱構造モデルに対する設計の健全性が確認できたことから、次年度は衛星フライトモデルの設計を固め衛星構体パネルの製造を行う。また、搭載機器の中で、独自に開発するイリジウム通信装置、ヒーターや磁気トルカに用いるスイッチング回路、ワイヤハーネスの設計を実施する。
|