研究課題/領域番号 |
16H06343
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山中 卓 大阪大学, 理学研究科, 教授 (20243157)
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研究分担者 |
野村 正 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (10283582)
田島 靖久 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 教授 (50311577)
松村 徹 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 准教授 (00545957)
笹尾 登 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任教授 (10115850)
鈴木 史郎 佐賀大学, 理工学部, 客員研究員 (50089851)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 素粒子実験 / K中間子 / 稀崩壊 / 電磁カロリメータ / 標準理論を超える新しい物理 / J-PARC |
研究実績の概要 |
*2016-2018年に収集したデータの解析:KOTO実験では、KLの崩壊位置とpi0の横方向の運動量の2次元平面で、信号事象を探す領域(信号領域)が見えないようにしてデータを解析する。これは、人的なバイアスを防ぐためである。2019年度は、2016-2018年に収集したデータの解析を進め、全ての事象選別の条件を決めた後、8月末に信号領域を開いた。シミュレーションによって背景事象数を0.05事象と予測していたのに対し、4事象観測した。これは標準理論で予測される事象数よりはるかに多い。原因がわからないため、9月にイタリアで開かれたKAON2019国際会議では、「物理結果」としては発表せず、現状をそのまま説明した。 *荷電K+中間子による背景事象の調査:国際会議後も、様々なチェックや背景事象の検討を続けた。その結果、中性のKLのビーム中に、電荷を持つK+粒子がわずかに(約100万分の1)含まれ、そのK+の崩壊が背景事象となる可能性が出てきた。ただし、シミュレーションによる予測だけでは不確定性が大きい。そこで、実際にビーム中に含まれるK+の数を測るための実験装置を急遽作成し、実験装置に組み込んだ。また、既に収集したデータを解析し、K+の量を見積もるための解析方法を開発した。 *中性子に起因する背景事象の削減:ビームの外に広がるわずかな中性子が検出器に直接当たることによって起きる背景事象を削減するため、ガンマ線のエネルギーとヒット位置を測定する電磁カロリメータを2018年の秋に改造し、ガンマ線と中性子を識別できるようにした。改良後に収集したデータを解析した結果、中性子による背景事象を、約1/50まで削減できることが明らかになった。 *追加交付の予算によって、データ収集用の計算機サーバーのハードディスクと非常用電源を入れ替え、安定的なデータ収集ができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
*2016-2018年のデータの解析を進め、予定通り、KAON2019国際会議までに信号領域を開くことはできた。 *また、観測された事象の原因として、K+による背景事象の可能性を明らかにし、その可能性をチェックできる準備を整えた。 *さらに、ビームハローの中性子に起因する背景事象を削減するために行った電磁カロリメータの改造によって、その背景事象を1/50に削減することに成功した。これは、当初想定していた1/10をはるかに超える性能であり、将来感度を上げていっても、ビームハローの中性子による背景事象は十分に抑制できる。
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今後の研究の推進方策 |
*加速器の運転が再開されてビームが出れば、すぐに荷電K+中間子のレートを測定し、K+粒子による背景事象数の見積もりの精度を上げる。 *上の結果を踏まえ、2016-2018年に収集したデータの結果をまとめ、論文発表する。 *さらにデータ収集を行い、背景事象の統計精度を上げる。 *K+粒子により背景事象を削減するために、ビーム中の荷電粒子を検出するための新たな検出器や、K+崩壊によって出るエネルギーの低い電子を検出するための測定器などを開発する。
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