研究実績の概要 |
初年度は研究計画に示したように、極小幅グラフェンナノリボン(GNR)の創製とその評価を目指す。極小幅GNRは理論的な予想では通常の数十nm幅の GNR のバンドギャップ (10 ~ 20 meV)より大きなバンドギャップ (0.1 ~ 0.5 eV) をもつことが予想されている。このため、極小幅GNRは半導体CNTと同様に、薄膜トランジスター (TFT) へのチャネルとして極めて有用なナノカーボンであるが、現在まで多くの困難があり未だ実現していない。本研究では、CNTの1次元内部空間で極小幅GNRを創製するという、本研究グループが培った技術と経験を総動員してこれを実現する。 本実験では、ジブロモビアントリレンを原料にグラフェンナノリボンの合成を行った。評価・測定手法としてTEMとCS-TEMでGNRの内包状態の確認、共鳴ラマン分光測定で内包物の同定を行った。200 °C, 300 °C, 400 °C, 500 °Cの反応温度で内包・重合を行なった。共鳴ラマン分光の結果から、300 °C以上の条件では新たなピークが出現した。これらの新たなピークは同じ構造のGNRのラマンスペクトルの計算結果(396 cm-1, 1220 cm-1, 1260 cm-1, 1341 cm-1のピーク)と極めてよく一致している。特に、計算結果の396 cm-1のピークはRBLM(Radial Breathing Like Mode)と呼ばれ、GNRの幅に大きく依存する。このことから、N = 7, アームチェア型GNRが選択的に合成できた。 反応温度についてはCNTの種類によって若干の差異はあるが概ね300 °C以上で反応が起こる。CNTの直径については1.2 nm ~ 1.5 nm程度が最も適していた。
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