研究実績の概要 |
シクロパラフェニレン(CPP)を母骨格とする共役π共役分子の材料への応用を見据えた大量合成法の開発に加え、トポロジーに着目した新たな環状π共役分子の合成を検討した。 前者については、これまで我々が開発した技術を民間企業へ移転することで、[5]CPPから[11]CPPの試薬としての販売にこぎつけていたが、[8]CPPの合成については従来法ではスケールアップが難しかった。そこで、新たに非対称構造を持つ4環性の環化前駆体を用いる方法の検討を行った。その結果、白金錯体により前駆体を環状二量化した後、環の一部を芳香族化する新たな[8]CPPの合成法の開発に成功した。この方法により、グラムスケールでの[8]CPPの合成に成功した。 後者については、メビウストポロジーを持つCPP誘導体の合成法の開発と、捻じれた骨格がCPPに及ぼす効果に興味を持ち検討した。捻じれを入れる炭素骨格として、2,2’,7,7’-置換フルオレン骨格と1,2,4,5-置換ベンゼン骨格に着目し、これと従来用いてきたU字構造を持つCPP前駆体とのカップリング反応と、それに引き続く環の一部の芳香族化により、望みの生成物の合成に成功した。いずれの化合物も結晶中ではパラフェニレン単位の自由回転が阻害されるためπ面の表裏が定義でき、π面が2回回転した捻じれ構造を持つ分子であることを明らかにした。また、フルオレン置換体は軸不斉を持つ化合物であり、キラル液体クロマトフラフを用いることで光学分割にも成功した。さらに、得られた化合物の光物性や電気化学的特性を測定し、捻じれた骨格が物性に及ぼす効果を解明した。
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