研究課題/領域番号 |
16H06354
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺田 眞浩 東北大学, 理学研究科, 教授 (50217428)
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研究分担者 |
近藤 梓 東北大学, 理学研究科, 助教 (30645544)
是永 敏伸 岩手大学, 理工学部, 准教授 (70335579)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 不斉合成 / 有機分子触媒 / 水素結合 / 塩基 / 触媒 / 分子変換 / 分子認識 |
研究実績の概要 |
ホスファゼンはその単位構造であるイミノホスホランユニット(P=N構造)の連結数が増すごとに塩基性が向上する。この化学的特質に着目するとともに、イミノホスホランに効果的な基質認識能を付与するため、その両端にグアニジンもしくはホスファゼンユニットを二つ導入したC2対称性を有する触媒分子群、ならびに水素結合ドナーとなる酸性官能基と超強塩基性官能基とを組み合わせた酸塩基二官能基型の触媒分子群を「基質認識型・超強塩基性有機分子触媒」として設計開発することを計画した。 これまでの研究で擬C2対称性を有するスピロ環不斉ビス(グアニジノ)イミノホスホランの開発に成功し、超強塩基性を示す有機分子触媒として優れた機能を示すことを明らかにした。一方、スピロ環不斉P3ホスファゼンの基本骨格の合成にも成功し、これら超強塩基性有機分子触媒の各種誘導体の合成とそれらを用いた触媒反応系の開拓を主に検討した。 スピロ不斉ビス(グアニジノ)イミノホスホランを不斉触媒とする反応開発では、超強塩基性であるがゆえに、従来の有機塩基では活性化が困難であったプロ求核剤から活性種を発生させることを主目的に検討した。その結果、チオノラクトンをプロ求核剤としたケチミンとのMannich反応では高いエナンチオ選択性で生成物を得ることに成功し、スピロ不斉ビス(グアニジノ)イミノホスホランの基質認識型・超強塩基性有機分子触媒としての有用性を示すことができた。一方、これまでのカルボニル基のα位の脱プロトン化による求核種の発生から離れ、他の酸性度の低いプロ求核剤の脱プロトン化による活性化に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
触媒合成の確認に必須となる質量分析装置の故障、修理に手間取ったため、当初、予定していた新たな基質認識型・超強塩基性触媒の設計開発に遅れが出ている。一方で、触媒反応開発については、スピロ環不斉ビス(グアニジノ)イミノホスホランによるカルボニル基のα位の脱プロトン化を経る活性化に一定の成果が挙げられたことを受け、酸性度の低いプロ求核剤として、非カルボニル化合物の活性化に着手し始めた。初期検討の段階ではあるがプロ求核剤の拡充に成果を挙げつつあり、今後は新規触媒の設計開発と並行して触媒反応系の拡充を実施することで遅れを取り戻して行きたいと考えている。 また、計算化学を用いた遷移状態解析に基づく選択性の発現機構の解明について実施しているが、理論解析は困難を極めており、未だに実験結果を説明しうる遷移状態の探索が出来ていない。超強塩基性有機分子触媒の反応解析が複雑系であることに一因があると考えられ、早急にこの問題を解決しなければならない。
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今後の研究の推進方策 |
これまではプロ求核剤として、酸性度が低いカルボニル化合物を中心に、スピロ環不斉ビス(グアニジノ)イミノホスホランによるα位の脱プロトン化を経る活性化を基軸に触媒反応系の探索を進めてきた。これらのカルボニル化合物の活性化を経る触媒反応系の開拓には一定の成果を挙げることができたことから、今後は非カルボニル化合物をプロ求核剤とする触媒反応系の探索に力点を移していきたいと考えている。例えばベンジル位や、スルホンのα位の脱プロトン化を経る触媒反応系の開拓を進めて行きたい。 また、これらプロ求核剤の拡充を検討していくうえで、これまで主として用いてきたスピロ環不斉ビス(グアニジノ)イミノホスホランでは活性化が十分にできないこと懸念される。この問題を回避するには新たな設計指針に基づく超強塩基性有機分子触媒の開発が不可欠である。新たな設計コンセプトに基づく触媒開発を始める上で、その基盤研究の取り組みが必須となる。現在、そのきっかけとなる新たな試みに基づく触媒分子設計の手がかりをつかんでおり、その実現に向けた開発研究を早急に進めたい。 また、現在、実験結果を説明しうる遷移状態の探索が出来ていない反応の理論解析については、計算化学における解析の根源的な問題点の究明を含め、その問題解決を図るとともに早急に遷移状態解析を進め、触媒設計に活用したいと考えている。
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