研究課題/領域番号 |
16H06355
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
関 隆広 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40163084)
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研究分担者 |
永野 修作 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40362264)
原 光生 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10631971)
川月 喜弘 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (60271201)
有光 晃二 東京理科大学, 理工学部先端化学科, 教授 (30293054)
増渕 雄一 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40291281)
山本 哲也 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (40610027)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 自由界面 / 高分子薄膜 / 光配向制御 / 形態誘起 / モデリング |
研究実績の概要 |
インクジェット塗布部分を起点とした物質移動現象の理解を進める努力を進めた。表面張力の大きく異なる高分子をインクジェット印刷で塗布すると、その紫外光照射あるいは加熱で誘起される物質移動の方向が逆転し、表面張力の高い高分子では、これまで観測した溝ではなく、突起ができることが分かった。このことから表面の表面張力勾配で誘起されるマランゴニ効果(表面張力の低い部分から高い部分への流れの誘起)で説明できることがわかった。さらに、紫外光と可視光の交互照射で、このマランゴニ効果を任意に制御できることを突き止めた。光誘起マランゴニ効果を利用した新たな微細加工法の提案として論文発表した。 側鎖型高分子液晶の特性に関して、二種類のメソゲンをランダム共重合させた側鎖型高分子液晶は、各々のホモポリマーの熱的相転移よりも高温側にシフトし、ホモポリマーでは見られない高次のスメクチック相(例えばスメクチックE相)が発現することを昨年度見出した。今年度は共重合体比を系統的に変化させ、熱相転移特性と薄膜での配向特性を紫外可視吸収スペクトル特性、斜入射X線散乱測定、偏光多角入射分解赤外法(p-MAIRS)を用いて系統的に評価した。 側鎖型液晶高分子がアモルファス子分子膜上で高密度ブラシを形成する現象を見出しているが、今年度はその挙動を脱濡れ現象と関連付けて観測することを試みた。液晶高分子の相転移温度の重要性が示唆された。 有機無機ハイブリッドメソ組織膜の研究では、柔軟なポリシロキサン鎖を用いることで湿度に応答して構造が相転移し、任意のタイミングで光固定化する系を提案した。メソ構造の固定化はゾルゲル法で固める系が良く知られるが、自在に構造を転換でき、任意のタイミングで固定できる有機無機ハイブリッド材料の提案は初めてといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
自由界面へのインクジェット塗布と紫外光照射で誘起される物質移動では、マランゴニ効果による物質移動であるとの見解を明確にできたことは大きなブレークスルーであった。さらに今までのパターン露光に伴うアゾベンゼン系液晶高分子の物質移動に対して、新たな解釈が必要となる可能性があり、それに対応するための新たな研究テーマ設定の方向性が見えてきた。 有機無機ハイブリッドメソ組織膜の研究では、柔軟なポリシロキサン鎖を用いることで湿度に応答して構造が相転移し、任意のタイミングで光固定化する系を提案した。自由界面側からの水分子の出入りによって相構造を制御する方法の提案も当初の目標にはなかった進展である。こうした系では組成一定のゾルゲル法で固める系が良く知られるが、自在に構造を転換できる有機無機ハイブリッド材料の提案は初めてのものである。 二種類のメソゲンをランダム共重合することにより、膜の配向特性と高次のスメクチック液晶相が発現することは当初の研究計画に無かった液晶化学上興味深い現象であり、今後の研究展開が大いに期待される。
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今後の研究の推進方策 |
自由界面からの表面張力の勾配に起因するマランゴニ効果であることがわかったことで、これまで20年来進めてきたアゾベンゼン液晶高分子膜のパターン露光照射で生じる物質移動における表面張力の寄与が示唆される。そこで、光に応答しないメソゲンを持つ液晶高分子膜に、表面偏析させるかLB法で転写することでアゾベンゼン層を表面のみに設ける系を設けパターン露光による物質移動を検討する。 表面偏析による自由界面での液晶高分子ブラシの形成は、平面に限らないので、特徴的な局面をもつ賦形高分子表面への応用を試みる。そのような賦形構造表面での液晶の光応答挙動を検討し新たな光応答液晶システムの構築を試みる。
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