研究実績の概要 |
本研究提案は、(1)Py-Imポリアミド(PIP)にエピジェネティックな発現制御機能を付与し、体細胞の初期化やiPS細胞の分化を誘導可能にする機能性PIPの開発、(2)グアニン四重鎖構造(G4)に特異的に結合する機能分子の開発、(3)DNAフレームと高速原子間力顕微鏡(AFM)を使用した遺伝子発現機構の解明と、ヌクレオソームの動的な一分子解析である。 令和2年度の主な研究成果を以下に挙げる。(1)5’-3’/ C-N(reverse)配向でDNAに結合する環状PIPの結合性を理解するためにX線結晶構造解析し、DNAの配列や構造、様々な結晶化条件を検討した。その結果、得られたDNA-環状PIP複合体の単結晶を用いたX線結晶構造解析に成功し、前例のないreverse配向に結合した結晶構造 (NDB: 6M5B) を解明した。(2)ヒトテロメア配列に対して特異的な生細胞イメージングを可能にする近赤外蛍光性PIPを開発した。(3) PIPのより効果的な細胞膜透過性の改善を目的として、トリアルギニン側鎖を導入したPIPを開発した。それらの生細胞への解析評価の結果、細胞内へのPIPの取り込みが確認された。トリアルギニン側鎖の導入による膜透過性の向上は、PIPのエピジェネティックな発現制御機能の改善にも役立つと期待する。(4)ケンブリッジ大学 Kaminski, C. F.教授らとの共同研究として、大腸菌(E.Coli)に集積するアプタマー機能化DNAオリガミシステムを開発し、高速原子間力顕微鏡を用いてその集積性を確認した。(5)ケント州立大学Hanbin Mao教授の光ピンセット測定技術によって、DNAナノケージ内でのグアニン四重鎖構造(G-quadruplex)やi-motifの構造の強度変化を測定し、核酸の高次構造がナノケージ空間内で安定化される現象を観察した。
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