研究課題/領域番号 |
16H06357
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三浦 英生 東北大学, 工学研究科, 教授 (90361112)
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研究分担者 |
鈴木 研 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40396461)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / ナノマイクロ材料力学 / 材料損傷 / 原子拡散 / 結晶粒界品質 |
研究実績の概要 |
Ni合金の高温負荷環境における劣化損傷過程の可視化を目的に,構成元素の光学反射率の波長依存性を応用し,多波長レーザ光源を用い,材料表面の組織を異なる波長のレーザ光を用いて観察し,得られた画像の波長依存性を分析することで主要元素の濃度分布変化の測定に成功した.例えばNi元素濃度分布の測定は波長628 nmのHe-Neレーザ光と波長410 nmのGaNレーザ光を併用することで実現できることを実証した.これはNiの光学反射率が波長500 nm以下で急減することを応用したものである.高感度観察光学系では共焦点系を構築することが不可欠となるため,対物レンズは可視光用と紫外光用,近赤外光用をそれぞれ準備し,使用波長ごとに切り替えるシステムを開発する必要がある.走査型多波長レーザ顕微鏡システムを実現することで,複数の元素濃度分布を同時に可視化する観察系が実現できる.同様に,Coは反射率が390nmから急激に減少するので,628, 410,360nm等での反射率強度変化を測定することで,それぞれの濃度分布変化が可視化できる.Alについては近赤外光(約800nmに極小値)と可視光との組み合わせで分析を考えており,次年度以降技術開発を継続する.本技術を応用し,高温クリープ負荷環境におけるガスタービン用Ni基超合金の劣化損傷過程の可視化に成功した.また,同一試験片を用い電子顕微鏡を用いた後方電子散乱回折法(EBSD: Electron Back-Scatter Diffraction)を用いることでこの劣化損傷過程における合金結晶組織内の原子配列の秩序性(原子配列の規則性の品質)が明瞭に単調現象することを定量的に明らかにすることができ,この劣化損傷過程が主として転位の運動によるものではなく,構成金属元素のひずみ誘起異方拡散現象によるものであることも明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定通り,多波長レーザ光源を併用することで材料表面の構成元素分布の可視化に成功した.また電子線回折法の併用により,Ni基超合金の強化組織の劣化損傷過程が,原子レベルシミュレーションで予測した通り,転位の運動により支配されているのではなく,構成元素のひずみ誘起異方的原子拡散に強く依存した現象であることを実証することができた.これらの研究成果は国際学会から招待講演を依頼されるなど,国内外の学会からも高く評価されていることから,順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,大気中あるいは様々なガス環境中で微小試験片を用いた高温疲労・クリープ試験を実施できる実験システムを開発する.微小試験片は電子顕微鏡観察室内に導入可能なサイズとする.試験片サイズを小さくすることで様々な負荷状態を容易に制御できることが期待される.試験片の温度は赤外線集中加熱炉を応用することで室温から1100℃まで制御可能である.治工具をセラミック化することで更なる高温環境下での実験も可能になるものと考えている. 本強度試験システムを開発する最大の利点は,高温高負荷環境における組織変化をIn-situで観察でき,試験中の応力ひずみ状態もモニタできるので,任意の損傷状態で試験を停止することが可能であり,電子顕微鏡観察と合わせ体系的,系統的な試験評価が可能になることである.特に今後の耐熱合金使用環境の過酷化(高温,高負荷)を考えると,これまでの安定亀裂成長域における亀裂進展速度評価に基づく寿命評価は困難になることが容易に想定され,亀裂の発生から急速破断に至る破壊現象が多発することが懸念される.亀裂の発生,言い換えると材料の初期損傷過程において,これまで述べてきたような強化組織の崩壊(消失)を伴う微細組織変化が関与する場合には,材料の初期強度評価に基づく寿命設計,評価は極論すると意味がなくなる.したがって,主要合金の500℃以上の高温高負荷環境における強化機構(主として分散析出強化組織)の変化の有無を定量的に解明することは,各種機器の安全安心運転,長期信頼性維持による機器ライフコストの削減には必要不可欠である.本微細組織変化,主要構成元素拡散可視化機能を有する高温材料強度評価システムの開発は,今後の材料強度研究における新たな基盤技術になるものと確信している.
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