研究課題
本年度は,目的達成のための要素技術である以下の5つの項目を中心に実施した.①XFEL照射に対応可能な大面積ナノ精度加工の高度化:昨年度に引き続き,大型ミラー対応可能な3次元形状計測機や干渉計を高性能化した.これと数値制御EEMや差分成膜法を高度に連携させることで,ミラー形状を1nmの精度で修正する技術を確立した.大型形状可変ミラーだけでなく大型集光ミラーを高い形状精度で作製することが可能となった.②XFELに最適化された2段集光光学系の提案とデモ実験:既存のズームコンデンサーは2組のアダプティブKBミラーで構成されていたが,新たにコンパクトかつ制御性のよい新規ズームコンデンサーを提案した.本光学系では,形状可変ミラーを凸面鏡から凹面鏡やその逆に変形させることでアダプティブ集光を行う.シミュレーションの結果,期待されるビーム径可変集光を実現できることが分かった.SPring-8にてデモ実験を実施したところ,予想したビーム径変化を確認した.③ピエゾ素子の変形ドリフトの抑制法の高度化:形状可変ミラーに搭載しているピエゾ素子の変形ドリフトを抑制するために,特別な電圧パターンを印加する方法を研究した.また,単結晶圧電素子を用いた形状可変ミラーを試作しその動作を調べた.これらは変形ドリフトの抑制効果が見られ,形状可変ミラーのさらなる安定性向上が可能となった.④波面計測法・集光ビーム径評価法の高度化:X線集光ミラーの形状誤差を高精度に決定するために必要となるX線波面計測法をテストした.ペンシルビーム法,グレーチング干渉計,タイコグラフィ法の精度を検証した.また,XFELにおける集光ビームの評価法として,スペックル計測法や蛍光X線の強度干渉計測などを試み,それぞれの精度について研究した.
2: おおむね順調に進展している
大型形状可変ミラーやそれに関わる要素技術の開発が順調に進んでいる.また,新型のズームコンデンサー光学系を提案し,そのデモ実験に成功した.これによって,本研究の応用範囲が広がった.
今後の予定として,①新型形状可変ミラーを使ったアダプティブ集光のテスト,②新型形状可変ミラーの機械式ベント部分の高性能化,③波面計測法や集光ビーム径評価法の高度化 を中心に進める予定である.完成度の高い集光システムの完成を目指し,高精度かつユニークな要素技術の開発を進めていく.
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 11件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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http://www-up.prec.eng.osaka-u.ac.jp/index.htm