研究課題
2019年度は,目的達成のための要素技術である以下の4つの項目を中心に実施した.①大面積ミラー作製プロセスの高度化,②形状可変ミラーの作製・動作試験,③形状可変ミラーの形状安定化法の高度化,④集光X線波面の計測に基づいた補償光学システムの高度化.①:基板形状に存在する不要なうねりを高精度かつ効率的に除去するために,大型ミラーに対応可能な3次元計測機や干渉計を高性能化し,これと数値制御EEM法や差分成膜法を連携させる手法を高度化した.これによって形状可変ミラーとして高い精度を持つミラー基板を得ることができた.②:XFELに最適化されたズームコンデンサ(2段集光光学系)の開発を目指し,ピエゾ駆動のバイモルフミラーと機械式ベント機構を設計・試作・高度化した.新しく提案した凹面と凸面を組み合わせた新規集光光学系の開発を進め,SPring-8において動作チェックを行った.予想された集光性能と集光可変性能を確認することができた.③:ピエゾ素子のドリフト抑制を目指し,素子への電圧印加時間を高精度に制御する手法を検討した.また,単結晶圧電素子を用いたバイモルフミラーやハイブリッド型形状可変ミラー(バイモルフミラーと機械式ベントのハイブリッドシステム)のそれぞれの試作を重ね,その安定性の評価をすすめた.後者においては圧電素子への印加電圧を小さくすることができるため,高い安定性を持つ可能性を見出した.④:高度な波面計測法として,グレーチング干渉計,ペンシルビーム法,インラインホログラフィ,タイコグラフィ,スペックル干渉計,蛍光X線の強度干渉法を研究した.グレーチング干渉計においては,様々なシステムエラーを明らかにすることで,高い精度を実現した.蛍光X線の強度干渉を用いる方法では実際にSACLAで実験し,ビームサイズと蛍光シグナルの自己相関が予想とよく一致した.
2: おおむね順調に進展している
本年度の計画通り進めることができた.特に,新規提案した凹面・凸面鏡を用いた新型ズームコンデンサ―が予想通りの性能を発揮するなど,当初目的を達成した.
今後の研究として,①新型形状可変ミラーを使ったアダプティブ集光のテスト,②形状可変ミラーの形状安定化法の高度化 を中心に進める予定である.①では,実際のX線を用いた集光実験を進め,本形状可変ミラーを用いたビームサイズ可変集光のデモンストレーション実験を進める.集光実験で得られた知見を開発にフィードバックする.②では,形状可変ミラーを長期間安定に運用するための手法を発展させる.特に機械式ベント機構でピエゾミラーをアシストする方法を中心に様々な手法を試みる.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 13件、 招待講演 7件) 備考 (1件)
Review of Scientific Instruments
巻: 90 ページ: 021702~021702
10.1063/1.5066105
http://www-up.prec.eng.osaka-u.ac.jp/index.htm