研究課題
超低消費電力光デバイスの実用材料であるIII-V 族化合物半導体量子ドットでは、電子のスピン緩和時間が発光寿命より十分長く、量子ドットに注入された電子のスピン状態は光電変換により発光円偏光に情報変換される。そこで、室温動作可能な金属強磁性体の電子スピン電極からスピン偏極電子を高効率に電流輸送するため、量子ドットへの超高速スピン注入および半導体バリア層中の高効率スピン輸送を研究し、量子ドットを用いた光電スピン情報変換システムの基盤を構築していく。今年度は、交付申請書記載の研究計画に沿って以下の実績を得た。電流スピン注入型スピン偏極発光ダイオードの室温動作特性を研究した。量子ドットへのスピン注入後のスピン緩和に対して、室温での熱励起に伴うスピン緩和を抑制できる量子ドット光学活性層を確立し、室温での電流注入発光で10%の円偏光度(Fe電極スピン偏極度の25%に相当)を得るとともに、スピン状態の電流電圧特性を研究した。その結果、MgOバリアを介して半導体に注入される電子の電界によるスピン緩和と、量子ドット注入後の熱的再励起によるスピン緩和の寄与を定量的に識別した。また、電界効果型スピン機能光デバイスの研究を進め、室温においてもスピン偏極度と円偏光特性を電界で制御可能な結果を得た。さらに、電子のスピン偏極度を高めるスピン増幅効果を持つGaNAs量子井戸とトンネル結合したInAs量子ドットを用いる世界的にも独自の結合構造を研究した。その結果、量子ドットの発光において、室温で90%、110℃でも80%にもおよぶスピン偏極度を得た。そして、GaNAsのスピン増幅効果に加えて、高温では量子ドットから熱脱離したスピンがGaNAsで再度増幅されドットに再注入されるスピン増強機構を確立した。以上より、実用を目指す室温動作が可能な、量子ドットを用いる光電スピン情報変換システムの基盤を構築した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件)
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