研究課題/領域番号 |
16H06360
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長 康雄 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (40179966)
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研究分担者 |
山末 耕平 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (70467455)
平永 良臣 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (70436161)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 走査型非線形誘電率顕微鏡 / 局所DLTS法 / 超高次SNDM法 |
研究実績の概要 |
① 超高次非線形誘電率顕微鏡法(SHO-SNDM)の更なる高度化を行った.ピクセル毎に局所C-V 曲線が計測でき界面準位密度,蓄積電荷,キャリア密度等の2次元的分布の分析ができる超高次非線形誘電率顕微鏡法(SHO-SNDM)の更なる高度化を図った.この高度化されたSHO-SNDM装置を用いてSiCパワーMOSFETのゲート電圧によるキャリアの再分布の様子のオペランド計測に世界で初めて成功した. ②原子分解能非接触SNDM(NC-SNDM)法並びに界面評価用非線形誘電率ポテンショメリ(SNDP)の高度化を行った. NC-SNDM 並び原子分解能で界面及び表面に存在する双極子モーメント由来の電位を純粋に抽出できるSNDP 法の能力を拡張し,界面の原子分解能計測を断面からでも狙って行えるように長焦点光学顕微鏡を備えたNC-SNDM,SNDP を開発した. ③局所DLTS法の開発を行った.界面準位密度を伝導帯からのエネルギー深さの関数として計測する最も有効で標準的な手法としてDLTS(Deep-level transient spectroscopy)法が用いられているが,本手法はマクロな手法であり界面準位密度の大きさと深さの2次元的な分布計測はできない.そこでSHO-SNDM法を変形・発展させ印加電圧に矩形パルスを用いその過渡応答を計測ピクセルごとに評価する局所DLTS法を開発した.この局所DLTS法をSiO2/SiC界面に適用し,界面準位密度Ditの2次元分布の定量的測定に成功した.今回得られた結果は従来考えられていた”Ditは界面内で原子レベルで均一に分布している”のではなく面内で2次元的に大きく分布していることを示しており,界面の欠陥に関する新たな知見をもたらすものとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度初頭に計画した研究計画に基づいた成果がほぼ出ていると考えられるから. 具体的には,まずピクセル毎に局所C-V 曲線が計測でき界面準位密度,蓄積電荷,キャリア密度等の2次元的分布の分析ができる超高次非線形誘電率顕微鏡法(SHO-SNDM)の更なる高度化を図り,この高度化されたSHO-SNDM装置を用いてSiCパワーMOSFETのゲート電圧によるキャリアの再分布の様子のオペランド計測に世界で初めて成功した. 次にNC-SNDM 並び原子分解能で界面及び表面に存在する双極子モーメント由来の電位を純粋に抽出できるSNDP 法の能力を拡張し,界面の原子分解能計測を断面からでも狙って行えるように長焦点光学顕微鏡を備えたNC-SNDM,SNDP を開発した. そして更に,界面準位密度の大きさと深さの2次元的な分布計測を行うため,SHO-SNDM法を変形・発展させ印加電圧に矩形パルスを用いその過渡応答を計測ピクセルごとに評価する局所DLTS法を開発した.この局所DLTS法をSiO2/SiC界面に適用し,界面準位密度Ditの2次元分布の定量的測定に成功した.今回の結果は従来考えられていた”Ditは界面内で原子レベルで均一に分布している”のではなく面内で2次元的に大きく分布していることを示しており,界面の欠陥に関する新たな知見をもたらすものとなったから.
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今後の研究の推進方策 |
①前年度に高度化した超高次非線形誘電率顕微鏡法を種々の計測対象に適用する.具体的にはSiO2/SiCMOS構造のSiO2絶縁膜中にトラップされた電荷の分布や,Potential Induced Degradation を起こした太陽電池や太陽電池のパッシベーション界面の分析を行う. ② 前年度開発した粗動機構を備えたNC-SNDM,SNDPを用いてSiO2/SiC界面の断面計測を実空間で行う.またMoS2等の新規2次元物質の評価解析を行う. ③前年度開発した局所DLTS法を用いてSiO2/SiC界面の極めて浅い準位の界面準位密度の2次元分布を計測する. 具体的には新規に低温で計測できる局所DLTS計測装置を開発し,更に局所DLTS装置の計測周波数帯域も大幅に拡大する事により,極浅い界面準位密度分布を計測し,①のSiO2膜中の電荷分布の計測結果と合わせて,取得したデーターを用いたシミュレーションにより移動度低下の原因を探求する. ④界面準位密度の2次元分布計測に加え,その起源を明らかにするためのSNDM ベースの装置の開発を継続する.前年度から開発を続けている,走査型非線形誘電率常磁性共鳴顕微鏡装置(SNDMR)に関して実現可能かどうか理論的に明らかにする.通常の電子スピン共鳴法(ESR)はマクロコピックな計測法であり,界面のみならずバルク全体に広がった欠陥やトラップサイトの平均的情報を得るには優れた方法であるが,界面を局所的に評価するには全く適さない方法である.一方走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)は界面準位密度に由来する信号像の2次元分布計測に初めて成功した方法であり,空間分解能が高くしかも界面及び酸化膜内にフォーカスした情報が得られる特長を持っている.そこでこの両者の特長を組み合わせて,局所的な界面準位密度の起源を明らかにする研究が行えるかどうかを理論的に明らかにする.
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