研究課題/領域番号 |
16H06362
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松井 佳彦 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00173790)
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研究分担者 |
松下 拓 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30283401)
白崎 伸隆 北海道大学, 工学研究院, 助教 (60604692)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 土木・環境システム / 環境技術 / 環境材料 / 反応・分離工学 / 水資源 |
研究実績の概要 |
1.超微粒子吸着剤の評価: 粒径(D50)1μmの微粉炭は乾式粉砕でも製造することができるが,凝集し集塊しているため吸着速度は遅いことも分かった.しかし,マイナス荷電(ゼータ電位)が低いため分散性は高く,分散後の安定性も高いことがわかった.一方,粉砕によって活性炭細孔表面が酸化し,親水化することによって吸着容量が減少することも明らかになった.経年使用した粒状活性炭は,超微粉砕するとMIBの吸着容量が増加するが,残存MIB吸着容量はヨウ素価によってある程度予測可能であった.カルキ臭の原因であるトリクロラミンの活性炭による還元分解除去は,粒子内拡散に続く,炭素面における1次反応と官能基との2次反応によって表現され,カルキ臭の分解に対する活性炭粒子の粒径効果を予測可能になった.フィルター捕捉による微粉炭の極低濃度測定法を構築した. 2.機能型凝集剤: 塩化アルミニウム水溶液中で水酸化アルミニウムを高温,高圧溶解し,その後,塩基度を調整することでポリ塩化アルミニウムを作成した.Al30量体生成条件を見出した. 3.紫外線酸化プロセス: 異なる真空紫外線波長のランプを用い,回分式分解実験を行い,ジオキサンの分解性に関する基礎データを収集した.さらに紫外線照射量とOHラジカル生成量計測を行い,分解効率は照射量のみでは説明されないことが分かった. 4.膜処理プラント実験: 有機物濃度が高い原水を用いて,試作凝集剤による膜ろ過性の違いを検討した.塩基度を高めたポリ塩化アルミニウム凝集剤(高塩基度PACl)を前凝集処理に使用すると有機物濃度が高い原水でも膜間差圧の上昇が抑制されることが示された.この理由は高塩基度PAClが有する高いバイオポリマー除去性によることが分かってきた.申請時の研究計画では有機膜実験装置を設置することになっていたが,予算などの関係上,次年度以降に検討することにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,下記のような計画を立てた.吸着処理については,湿式ビーズミルと乾式ビーズミルによる超微粒度化と微粉炭の性質や吸着特性,フィルター捕捉による微粉炭の極低濃度測定法,使用済み粒状活性炭の残存吸着容量や有効細孔の変化を検討する.凝集処理については,ポリ塩化アルミニウム凝集剤について有効成分と思われるAl30量体生成条件と高荷電中和型凝集剤の製造を検討する.促進酸化処理については,異なる真空紫外線波長のランプを用いた際の分解性の基礎データの収集と紫外線照射量とOHラジカル生成量計測を行う.膜処理については,小型2系列パイロットプラントを用いた実験を実施し,膜間差圧の長期変化と膜ファウリング物質の分析より無機膜ファウリング性を検討する.これらの全てを実施できた.使用済み粒状活性炭の残存吸着容量や有効細孔の変化については論文としてまとめることができるなど,成果も上がりつつある.
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今後の研究の推進方策 |
吸着処理については,ビーズミル粉砕時の粒子の酸化と吸着容量の関係,酸化の原因と抑制を検討する.昨年度に構築したフィルター捕捉による微粉炭の極低濃度測定法を使って,微粉炭を凝集沈澱砂ろ過の通常の浄水処理に使用した際に課題となる残留性を検討する. 凝集処理については,微粉炭の凝集性に優れた凝集剤の調整を試みる. 促進酸化処理については,紫外線照射量以外に分解率に影響を及ぼす因子の探索を進めるとともに,分解率の数値計算シミュレーション法の検討を進める. 膜処理については,微粉炭プレコートによる膜ファウリング物質の除去を検討する.また,昨年に引き続き,2系列パイロットプラントを用いた実験を実施し,膜間差圧の長期変化と膜ファウリング物質の分析より無機膜ファウリング性を検討する.
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