研究課題
1.超微粒子吸着剤の評価: 超微粉砕後の活性炭についてBoehm滴定やFT-IR分析などを行い,疎水的な活性炭表面に酸性官能基が生成することで,活性炭の親水性が増加することが分かった.また,粉砕時にOHラジカルなどの生成が確認されなかったことから,メカノケミカル反応により官能基が生成したと推察された.酸化を抑制した粉砕条件を検討した.2.機能型凝集剤: 凝集沈澱砂ろ過においても超微粉炭の粒子個数除去は5-logで,残留個数は100~200 個/mLであった.さらに,残留粒子は荷電中和が低い小粒子であることを踏まえ,活性炭残留の原因と低減に関する最適凝集剤・条件について考察を行った.凝集沈澱砂ろ過において,荷電中和力の高い凝集剤を用いることにより,ウイルスの除去率が向上することが分かった.また,トウガラシ微斑ウイルスが水系感染症ウイルスの代替指標として有効であることが示唆された.3.紫外線酸化プロセス: 昨年度に明らかにしたVUV促進酸化処理による1,4-ジオキサンの分解に与える共存無機陰イオンの影響をモデル化することにより,1,4-ジオキサンの分解予測に成功した.また,酸化分解物の安全性評価として,環境中での農薬分解生成である3-メチル-4-ニトロフェノールの酸化処理での毒性変動を調べ,毒性発現に寄与する物質を,オービトラップ質量分析と構造活性相関を組み合わせることにより推定した.4.膜処理プラント実験: 膜間差圧の上昇,すなわち膜ファウリングの原因物質であるバイオポリマーのさらなる除去を目指して,超微粉炭による膜のプレコート実験を行った.その結果,分子量1万Da以上と言われるバイオポリマーが吸着のみならず,機械的にもろ過分離されることが見えてきた.そこで,この特徴を生かした浸漬型の有機膜実験装置を設置し,連続運転を実施したところ,超微粉炭プレコートの有効性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
平成29年度計画の検討項目と進捗状況は下記のようであり,順調に進捗しているといえる.1.超微粒子吸着剤の評価: a: 粉砕による酸化と表面科学の変化(湿式と乾式粉砕),b: 酸化還元雰囲気などの粉砕条件による細孔表面の制御,c: 高吸着容量・高還元力超微粒子活性炭の製造.aについては終了し,平成30年度にかけて実施のb,cについても検討が開始され,計画通りといえる.2.機能型凝集剤: 超微粒子活性炭の低残留性や高い膜ファウリング物質(バイオポリマーなど)凝集性を有する凝集剤の開発.これらは平成30年度にかけて実施予定で,すでに,酸塩基を使用せず粉末状の水酸化アルミニウムを高温高圧で溶解する方法で,市販の高塩基度ポリ塩化アルミニウムを超えて超微粉炭の低残留性を可能にする新規ポリ塩化アルミニウムを試作した.また,ウイルスについても処理性評価を実施し,成果があがっている.3.紫外線酸化プロセス: 反応成分と反応過程を定量・定式化することにより,共存無機イオン類の影響を組み込んだ分解予測モデルの構築に成功し,計画通りの進捗状況にある.また,分解副生成物の安全性評価についても順調に進行しており,平成30年度にかけても実施予定である.4.膜処理プラント実験: 小型有機膜パイロットプラント実験装置を設置し,膜ファウリング原因物質であるバイオポリマーをプレコート活性炭で除去する実験を開始し,成果があがりつつある.
1.超微粒子吸着剤の評価: 計画通りに,酸化還元雰囲気などの粉砕条件による細孔表面の制御,および高吸着容量・高還元力超微粒子活性炭の製造について進める.2.機能型凝集剤: 超微粉炭の低残留性を可能にする新規ポリ塩化アルミニウムの試作を進め,そのメカニズムを明らかにする.凝集剤の荷電中和力とウイルスの除去性の関係性を明確化する.3.紫外線酸化プロセス: 装置内流況を組み込んだモデルを構築し,真空紫外線処理での分解予測を試みる.真空紫外線分解における波長依存性を1,4-ジオキサンをモデル物質として調べるとともに,塩素-真空紫外線処理についても検討を始める.また,農薬を中心として,酸化処理プロセスにて生成される分解副生成物の安全性評価を行う.4.膜処理プラント実験: 小型有機膜パイロットプラント実験装置を用いて,膜ファウリング原因物質であるバイオポリマーをプレコート活性炭で除去する実験を進める.
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Water Research
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