研究課題
1.微粒子吸着処理:湿式微粉砕によって活性炭の粒径(D50)を0.14μmまで粉砕でき、限界粒径を確認した。この超微粉炭は、NOM(天然有機物質)とくに膜処理の最大の課題である膜ファウリング原因物質のバイオポリマーの吸着除去に特に優れていることが明らかとなり、高度膜処理の研究へ展開した。しかし、超微粉炭製造においては、グラフェン構造の炭素と水が反応し酸性官能基が生成し活性炭は親水化、疎水性物質の吸着性低下につながる。さらに、微粉炭を通常の浄水処理に適用する際に課題となる残留性を定量評価するためのフィルター捕捉による微粉炭の検出と極低濃度測定法を構築した。2.高機能凝集処理:凝集沈殿砂ろ過に微粉炭を適用する際にはその残留が懸念される。まず、通常の粒径の活性炭の残留濃度の実態調査を実施し、極低濃度の残留性を初めて明らかにした。次いで、微粉炭を使用した際にも、同程度の残留性を達成する凝集処理条件を明らかにした。高消毒処理耐性を有することが明らかになってきた水系感染症ウイルス6種について、凝集における物理的除去と凝集剤による感染性の失活効果を区別した評価を実施した。3.真空紫外線促進酸化処理:塩素-真空紫外線処理による、共存NOM由来の副生成物の生成を調べた結果、ハロアセトニトリル類とアルデヒド類は、照射時間の延長に伴い、濃度がいくぶん増加する傾向にあるのに対し、トリハロメタン類とハロ酢酸類は、照射時間の延長に伴い濃度が減少することが分かった。また、真空紫外線強度を小さくするほど、通水流速を大きくするほど、汚染物質の単位エネルギーあたりの分解効率が高くなることが示された。4.高度膜処理:バイオポリマーの高い除去を目指し、超微粉炭による膜のプレコート実験を行い、バイオポリマーが吸着のみならず機械的にもろ過分離されることが分かり、新たな膜ろ過法として検討を進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
これまでの進捗状況は下記のようであり、計画以上に進捗しているといえる。1.微粒子吸着処理: 粉砕による表面科学の変化は細孔表面の酸性官能基の増加であることなど明らかにし、無酸素条件粉砕により酸性官能基の増加は若干抑制可能であった。しかし、溶媒である水と不対電子の反応による酸性官能基の増加であるため完全な抑制は難しいことも分かった。極低濃度の超微粒子活性炭の残留性評価法を構築した。2.高機能凝集処理: 凝集剤製造反応条件と有効成分特性を検討し、低アルミニウム残留性、ウイルスやヒ素の高除去性などを可能とするための凝集剤とその有効成分を見出し、製造反応条件などを明らかにした。3.真空紫外線促進酸化処理: 基本的分解性能の把握・反応条件と成分特性の体系化・副生成物の評価・過酸化水素などによる促進酸化に関する研究はすでに終了し、論文としてまとめる段階にある。また、共存NOM由来の消毒副生成物を把握する一方で、分解物の安全性評価を行い、生成された(塩素、オゾン)変異原性に寄与する物質を推定するとともに、農薬とその分解生成物の酸化処理(オゾン)における処理性を評価した。4.高度膜処理: 膜ファウリング物質である高分子の親水性バイオポリマーは、粒径150 nmまでの微粉砕した超微粉炭で効率的に除去する鵜ことが可能であり、高効率の膜ファウリング抑制方法へと大きく展開し、当初の見込み以上の大きな成果を得ることができる。
1.微粒子吸着関連はほぼ終了し、2.高機能凝集処理についても残す課題は複数種凝集剤混合添加のみである。3.促進酸化については、今後凝集処理性に与える影響を検討し凝集と酸化処理の相乗効果を検討するとともに、流況を組み込んだモデル化を進め、反応成分、反応過程の定量化と、実用化に向けた処理プロセスの高効率化を検討する予定である。4.高度膜処理については残す課題は計画通り、促進酸化膜分離長期連続実験と+膜ろ過実験であるが、超微粉炭プレコートによるファウリングフリー膜ろ過研究を限られた時間ではあるが、様々なタイプの膜ろ過を用いて検討を進めたいと思っている。
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Water Research
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