研究課題/領域番号 |
16H06363
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
青木 孝義 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (10202467)
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研究分担者 |
長谷川 直司 国立研究開発法人建築研究所, 建築生産研究グループ, グループ長 (10356016)
松田 浩 長崎大学, 工学研究科, 教授 (20157324)
湯淺 昇 日本大学, 生産工学部, 教授 (00230607)
岸本 一蔵 近畿大学, 建築学部, 教授 (40234215)
森田 千尋 宮崎大学, 工学部, 教授 (60230124)
小椋 大輔 京都大学, 工学研究科, 教授 (60283868)
濱崎 仁 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (30370703)
丸山 一平 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (40363030)
高橋 典之 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60401270)
張 景耀 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 准教授 (50546736)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 歴史的建造物 / オーセンティシティ / 耐震性能 / 保存再生技術 |
研究実績の概要 |
国内外の組積造とRC造の歴史的構造物について、文化財保護、材料、構造と環境の視点から保存・補強に関する文献調査を進め、特に国際会議(世界地震工学会議)において発表された関連分野の最新研究成果について分析を進めるとともに、過去になされた歴史的構造物の調査・診断・修復・補強方法を整理し、耐久性向上技術と補強技術について、補強効果、施工精度、景観、耐久性、傷害程度、オーセンティシィティ、可逆性、経済性などの観点から評価を進めた。 小径ドリル型削孔試験機を改良してコンクリートへの適用のための検討を行うとともに、橋梁構造物の3D化と3Dデータに基づくFEモデルの構築およびFEMによる静的および振動解析のシステムを構築した。また、構造物の非破壊検査方法の現状と材料劣化に関して経時変化を整理した。 国内の調査対象とする歴史的建造物の実現場の事前調査を行い、重要文化財と登録有形文化財の建物を特定し、現地調査、モニタリング調査を開始した。歴史的建造物の材料劣化防止のため、現地調査、予測モデル開発、材料物性評価から劣化メカニズムを明らかにし、保存再生技術(環境・材料)について提案を行い、セメント系材料を用いた構造物の変質評価のための微細構造分析に関わる前処理についての検討を行い、一定の成果を得た。塩害環境下において3年を経過した各種補修を施した屋外暴露試験体について鉄筋腐食抑制効果の検証実験を行い、補修工法および環境要因別の腐食抑制効果について整理した。RC梁部材の経年(鉄筋腐食)による性能劣化を検討するため、せん断補強筋の付着を取り除いた梁部材の曲げせん断実験を行った。 2016年イタリア中部地震における被害状況調査および中国常州青果巷の歴史的建造物の補強状況について現地調査を行った。イタリアではRC飛行船格納庫のモニタリングを再開し、中部地震で被害を受けた教会堂のモニタリングを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組積造を中心とした歴史的建造物の保存・補強に関する文献調査を進めるとともに、過去になされた歴史的構造物の調査・診断・修復・補強方法を整理し、耐久性向上技術と補強技術について評価を行った。 小径ドリル型削孔試験機を改良してコンクリートへの適用のための検討を行い、粗骨材を避けた削孔場所の特定方法と検量線の提案を行った。国内の歴史的構造物およびイタリアの被災構造物を調査し、被災地近郊の教会をSfM技術により3D化を試行した。 歴史的建造物の塩類風化による劣化原因と実態の把握のため、重要文化財三井三池炭鉱宮原坑、神戸市景観形成重要建造物神戸ハーバーランド煉瓦倉庫、登録有形文化財半田赤レンガ建物の析出塩分析と環境測定を実施した。また、材料の塩水分移動実験を行った。さらに、セメント系材料を用いた構造物の変質評価のための微細構造分析に関わる前処理についての成果を用いて、今後は実構造物の分析を行う。宮原坑については補強工事量最小化のための、半田赤レンガ建物については補強効果の検証のためのモニタリングを開始した。一方、外観上の変化を極力低減させたRC構造物の補修工法を検討し、劣化状況別の模擬試験体を作製し、長崎県端島(軍艦島)において屋外暴露試験を開始した。また、3Dスキャナを用いた歴史的構造物の劣化状況のデジタルアーカイブ化について、モデル化の検討およびデータの取得等を行った。RC梁部材の実験の結果、せん断補強筋の付着劣化は劣化部が一部であっても破壊モードに強く影響することが分かった。 中国南部にある木造架構と青レンガ空洞化壁の複合型歴史的建物に対して、微動計測により壁の建物全体への補剛効果を確認した。イタリアでは、RC飛行船格納庫のモニタリングを再開し、中部地震で被害を受けた教会堂応急処置、補強工事中における構造物の安定性および補強効果検証のためのモニタリングを開始した。
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今後の研究の推進方策 |
歴史的構造物の調査・診断・修復・補強方法をさらに整理し、その評価を進めるとともに、さらなる調査対象とする実現場を特定することに努める。また、最新の知見を踏まえ、調査対象として適切な事例(地域・建物)を抽出し、具体的な構造特性調査を進め、保存・再生行為の効果検証解析モデルの構築を進める。 煉瓦、目地モルタルの国内外の技術レベルを年代毎に整理してその再現を図り、煉瓦造を対象とした非破壊・微破壊検査方法を構築する。特に小径ドリル型削孔試験機は、コンクリートへの適用を継続して検討するとともに、煉瓦造としての強度推定のための検討を行う。非破壊検査技術を用いて図面、構造解析モデルの自動生成を含む、診断・解析システムの構築を試行するとともに課題を整理し、歴史的構造物の3D計測によりFEMモデルを構築し振動解析を行い、実振動試験と比較する。 歴史的建造物の析出塩と環境変化の年挙動を明らかにするため、定期的に調査を行う。塩を含んだ材料の水分移動特性値と析出塩の関係を明らかにする。今後、セメント系材料を用いた構造物の変質について評価を行うとともに、変質を考慮した数値解析的手法の開発を継続する。また、他の水硬性セメントとして、たたきについての硬化プロセスについての分析を開始する。屋外暴露試験については継続的に測定を行い、提案した補修工法の効果の持続性等について検証し、必要に応じて補修工法の改良を行う。また、補修後の外観保持のための部材の現状データの取得とその再現方法について実験的検討を行う。一方、付着に及ぼすコンクリートの中性化の影響、或いは腐食の影響について検討を行う。 中国南部にある複合型歴史的建物を対象とし、壁単体の倒壊実験および建物補強前後の微動計測により、その補強効果に関する定量的評価方法を提案する。イタリア中部地震で被害を受けた歴史的建造物のモニタリング調査を引き続き実施する。
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