研究課題/領域番号 |
16H06364
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
長尾 忠昭 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA主任研究者 (40267456)
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研究分担者 |
北島 正弘 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, NIMS特別研究員 (00343830)
武田 淳 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (60202165)
石井 智 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (80704725)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 赤外線 / ヘテロ接合 / 界面光起電力 / グラフェン / V族ナノ薄膜 |
研究実績の概要 |
昨年度に続いて、赤外帯域で大きな光学応答を持ち低損失な導電性化合物材料の探索を進めた。窒化物、炭化物に加えて、金属ホウ化物が高い光学応答性と低い光学損失をもつことを見出し、これを赤外線波長選択素子などとして応用することを検討した。また、非対称グラフェン構造による整流デバイスの開発に着手し、試作品を得た。グラフェンの平均自由行程と同程度のサイズを持つ非対称構造を作成し、そのグラフェン構造を赤外帯域に共鳴を持つプラズモン光捕集構造に組み込んだ。しかし、プラズモン光捕集構造の製作の際に生ずるグラフェンの欠陥のため、平均自由行程が低下し、明瞭な整流効果は得られなかった。その反面、並行して製作していたSiーAl接合による赤外光捕集型の熱起電力デバイスと比べて2桁程度高い感度が得られており、このグラフェン構造を次年度以降に赤外線ハーベスタや赤外線センサーとして応用することも検討している。また、並行して、BiやGaSbやBiSbなどを光伝導形の赤外検知器材料として使用することを検討し、単結晶状のGaSbやBiSb合金ナノシートの合成を、Si基板上のMBEにより試みた。これらのヘテロ構造において、光照射によって起電力が生じることを確認した。また、膜であるBiやBiSb単結晶膜の光照射の位置によって発生する電圧が異なることを見出し、この現象を位置敏感光検出器として用いることを検討している。また並行して、湿式合成法と圧力注入法によるBiナノワイヤの合成を行い、結晶性の高い良好な材料を得た。これを光捕集アンテナかつ光応答材料として用いることを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
金属ホウ化物である六ホウ化ランタンの近赤外帯域での高い赤外応答性を利用して、狭帯域の赤外線エミッターを提案した。また、アルミニウムをベースとした耐熱超合金に対して第一原理誘電応答の計算を系統的に行い、NiAlが高い赤外応答性を持つことを見出した。これらの材料は高耐熱高強度赤外線エミッターの構成材料として、有望であり企業との共同研究と事業化を計画している。また、酸化物に重金属をドープした赤外プラズモン材料も見出し、この材料を用いた光共振器構造と光起電力素子の製作を開始した。さらに、上記Bi多結晶膜の赤外THz物性研究として、BiSb膜の光応答におけるツェナートンネリング現象の研究と、磁場中THz分光を用いた、トポロジカル表面状態における偏光状態の研究も国際共同研究として準備した。これらの材料物性研究を赤外線光検出素子の構成材料として応用したり、そのためのデバイス製作プロセスの検討も開始した。この間、金やSi、SiNを用いたMEMS構造のプロセス開発を進め、狭帯域な赤外線吸収構造と焦電体薄膜とを組み合わせた赤外線センサーの設計を行い、製作を開始した。このように赤外線創エネルギー素子としての候補材料の開拓やデバイス製作プロセスは進展しているが、デバイスの開発が若干遅れている。一方で、グラフェンの巨大な赤外光応答や、酸化物赤外プラズモン材料の高い光触媒増強効果等、想定外の現象も発見され、副次的な論文成果も得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
上記の様に、赤外線創エネルギー素子としての候補材料の開拓やデバイス製作プロセスは進展しているが、デバイスの開発が若干遅れている。狭帯域赤外吸収構造と熱応答材料や上記の光伝導材料を効果的に組み合わせ、所望の赤外応答特性を持つ光電変換デバイスを実現する。さらに、本研究で新たに見いだされた、グラフェンの巨大な赤外光応答やBi合金の新奇な物性を更に掘り下げ、デバイスプロセスを開拓しつつ、高感度な赤外応答デバイスの実現に向けた基礎物性研究とデバイス開発をバランスよく進めて行きたい。
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