研究課題
本研究では、超臨界水熱法で合成した有機修飾ナノ粒子を利用した、超高濃度セラミクスナノ粒子分散体、“フルイディックセラミクス”を設計する合理的材料設計基盤の構築を目的とする。本年度の研究においては、有機修飾ナノ粒子とその合成プロセスの設計手法の構築、ナノ粒子の分散凝集推算法の構築、革新的熱材料創製の基盤となる高速材料探索システムの構築を行った。1)収差補正高分解能TEM/EELS分析により、有機修飾CeO2ナノ粒子表面の糸状のコントラストを取得し、シミュレーションと併せ、表面に修飾している有機分子鎖の直接観察に初めて成功した。さらに同じ粒子でも{100} 面では{110}面と比較し修飾密度が高いことを明らかとした。以上の結果は、修飾率の露出面依存性を直接的に示すものである。また有機修飾ナノ粒子の量産プロセス設計基盤構築のため、超臨界状態での水の溶媒効果についてより詳細な検討を行い、反応中間体の媒質親和性を決定する誘電率の効果に加え、酸化物合成反応における反応物としての水の効果も加えた高精度解析を可能とした。2)溶媒中分散の可否を元に、有機修飾ナノ粒子の溶媒分散特性を溶解度パラメータで整理した。さらに限界分散濃度の温度依存性(相平衡挙動)を測定し、溶解度パラメータの近い溶媒の方が混合エンタルピーが小さく高分散性であるという、分子溶解系の挙動と一致する結果を得た。これより分子の溶解度を記述する関係式や溶解度パラメータに基づく方法論を、粒子を分子と見立てることでナノ粒子-溶媒系の分散挙動に対して適応できることを示した。3)効率的な熱伝導材料探索のため、多様な組成を持つ化合物を連続的に合成可能なコンビナトリアル連続式超臨界水熱合成装置を開発した。モデル系として、種々の異元素をドープしたCeO2について合成を行い、濃度の変化に伴う連続的な生成物の変化を確認した。
1: 当初の計画以上に進展している
始めに設定した1)ナノ素材設計手法の確立、2)分散凝集(相平衡)推算法(設計)の確立、3)凝集(相分離)構造の評価法(規則構造抽出)の開発、4)革新的「熱制御」材料創製、に関する研究を順調に遂行している。1)ナノ素材設計手法の確立においては、すでに超臨界反応の高精度解析や修飾鎖の直接観察を達成しており、さらに有機修飾が無機ナノ粒子そのものの材料特性に与える影響に関しても評価が進められている。当初の計画以上に進展していると判断される。2)分散凝集推算法の確立においては、従来分子の溶解に用いられてきた関係式や溶解度パラメータに基づく方法論を、粒子を分子と見立てることでナノ粒子-溶媒系の分散挙動に対して適応できることを示した。計画通りに化工熱力学に基づくナノ粒子系相平衡の推算基盤が形成されつつある。3)凝集構造の評価法の開発においては、ナノ粒子の凝集構造と流動性の相関を実験的に明らかとし、計算科学(SNAP-DEM)によるその表現にも成功している。さらに分散凝集挙動が粘度に及ぼす影響を評価するための数学的表現基盤も整えられた。当初の計画以上に進展していると判断される。4)革新的「熱制御」材料創製に関しては、計画通りに上記の設計基盤を元に熱伝導材料であるBNの高効率有機修飾を実現している。さらにコンビナトリアル連続式超臨界水熱合成装置による高速材料探索基盤も確立できており、今後熱制御材料創製が加速することが期待される。
1)ナノ素材設計手法の確立:放射光XAFS測定による有機・無機相互作用の評価、さらには第一原理計算を行い、最終的には各面への有機修飾機構を解明することで有機修飾を自在設計(制御)する基盤を確立する。2)分散凝集(相平衡)推算法(設計)の確立:粒子間ポテンシャル評価、粒子―媒体相互作用評価を行い、実際のナノ粒子の分散・凝集の相図を再現する計算科学的評価法を確立する。化工熱力学に基づくナノ粒子系相平衡の推算基盤を確立し、さらに、上記有機修飾設計と連動させ、任意溶媒への分散を可能とする有機修飾ナノ粒子の合成プロセス設計指針を構築する。3)凝集(相分離)構造の評価法(規則構造抽出)の開発:相対粘度マスターカーブからの偏倚に与える修飾密度、長さ分布、粒子電荷等の影響を評価する。また計算による粘性起源解析も行い、界面でのスリップ、粒子回転、粒子の電荷等の影響を議論し、均相系での流動性の機構解明を図る。さらに凝集挙動に関しては、凝集構造変化がどのように粘性に影響を与えるかを予測する数学-ナノ流体融合学術体系を確立する。濃度、温度、せん断、超音波といった複雑な環境下での、構造と粘性との関係を評価することで、統一的な粘性の表現法の開発を試みる。4)革新的「熱制御」材料創製:様々な有機修飾状態のナノ粒子を、高せん断エクストルーダー混合機で、溶媒、樹脂と混合する。高充填でも弾性靭性を失わない環動高分子や高度制御ブロック共重合体など、先端高分子材料との複合化にも展開する。高分子内ナノ粒子分散・凝集構造による機能発現を体系化し、目的とする熱遮蔽、熱伝導材料の構造最適化を行う。以上によりフルイディックセラミクスの生成原理の解明し、その設計法を確立する。それに基づき、流動性と熱制御機能とを同時達成する高性能「熱制御」材料を創製する。
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