研究課題/領域番号 |
16H06382
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
足立 泰久 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70192466)
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研究分担者 |
小林 幹佳 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20400179)
山下 祐司 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30543227)
雷 中方 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30634505)
野村 暢彦 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60292520)
小川 和義 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60375433)
和田 茂樹 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60512720)
京藤 敏達 筑波大学, システム情報系, 教授 (80186345)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | コロイド / フロック / 凝集速度 / 高分子電解質 / 沈降 / モンモリロナイト / 干渉沈降 / 界面動電現象 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、環境中のコロイドがナノ粒子と溶存有機物から構成され、乱流条件下にあることを想定して得られたフロッキュレーションの動力学の結果に基づいて、環境界面工学の体系を構築しその有効性を実証すること、さらにその活動を通して国内および世界をリードする拠点基盤とネットワークを構築することある。これらの目的を遂行する立場から、1.コロイドの凝集過程に関わるダイナミクスの解明、2.多孔質複合体のゼータ電位の実体解明、3.フロック群の乱流沈降の水理解析、4.濃厚コロイドの分離技術の確立、5.バイオフィルムにおける凝集と界面動電現象の解明、6.フィールドにおける凝集沈降と水質構造の関連づけ6課題について、実験を中心に研究を推進した。特に課題1に対しては、高分子電解質を加えた際の凝集速度の解析では、正および負に帯電する2種類の高分子電解質を添加した場合にはそれら2つの高分子電解質の相互作用の結果、凝集が大きく阻害される場合と逆に促進される場合の両者が存在することを明らかにした。これらは腐植物質の機能やポリイオンコンプレックスの作用機構を解析する重要な土台となることが期待され、課題4の展開にも関連すると考えられる。一方、課題2に関連しては、自作の実験装置の開発が進展し、課題5への展開が期待される。また、課題3に関連しては、モンモリロナイトフロック群の沈降過程の解析が進展し、沈降乱流の可視化に成功した。また、課題6に関連し、水環境における懸濁態挙動に関するワークショップを開催し、室内実験の成果とフィールドでの測定の関連付けの可能性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた通り、研究の進捗状況は順調である。特に概要でも述べたとおり課題1に対しては様々なケースの凝集過程について目覚ましい成果が得られ、その成果は今後も大きく発展、展開することが期待できる。実用的な系では凝集は乱流混合で促進されるが、様々な角度から乱流中での凝集過程を解析していく中で、乱流構造そのものに対しこれまでにない新しい視点が明らかにされつつある。課題3では粘土のミクロ粒子間相互作用とマクロスコピックな粘土懸濁液の移動現象に関する問題提起と沈降挙動の可視化に進展がみられ、化学的条件と水理学的条件の両者をパラメータとする実験を推進している。課題1~3の進捗に基づいて、課題4~6の後半3課題に関する具体的な関連づけが可能となる。特に、測定系においては、層流せん断流れ場でのフロックの運動の観察を可能にするクウェットチャンバーと2方向からの沈降挙動の撮影を可能にする沈降顕微鏡から構成されるフロック流動可視化システムを前倒しで導入したことによって、単一フロックの沈降と電気泳動をフロック径の関数として測定する装置の飛躍的な精度の向上とフィールド向けの簡素化した測定系の確立がなされつつある。 また、7月28日にサマースクール「土・水・生命環境とコロイド界面現象2017-Natural Organic Matter-」、9月26日につくばグローバルサイエンスウィークにて、セッション「Innovation of Bio-Resources and Advanced Material Based on Colloid and Soft-Matter」を開催し、さらに12月29日に中国科学院(北京)での出前講義など複数回のセミナーを実施し国際的なネットワークを強化した。 また、本研究の実験実施は、日本人大学院生に加え、中国、インドネシア、マレーシア、ベトナム、インド、バングラデシュ、ロシアなどからの留学生により遂行されており、研究室の環境が非常に国際化された体制で実現されている。
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今後の研究の推進方策 |
長期的に見た場合の本研究の展開の可能性は、1.やわらかく多孔質で不均一な環境コロイド界面の動的挙動の物理学的学理を極めることと、2.微生物、フィールド科学など関連分野を有機的に結びつける学問的体系の可能性を示すことの2つの方向に集約される。特に本年度は前者を産業技術総合研究所の日下靖之博士との共同研究によって強化する。次年度以降はこの両者を複眼的に捉えながら最大の効果を目指して研究を行う。 具体的には、実績概要で述べた6課題について、計画調書に合わせ研究を継続するが、特に課題1の成果と進捗が目覚ましいので、そこに軸足をおいて他の課題の展開を図る。研究の遂行上、留学生の貢献が大きいことが特筆されるが、次第に日本での生活や価値観にも馴染んできており、今後加速度をもった研究の推進が見込まれる。尚、長期的には本研究の進展とともに、大学院生の学位取得が進み、母国などの研究機関等に就職することによって、国境を越えたユニークなネットワーク形成が期待できる。 本研究課題は学際的色彩が強く、戦略的に共通課題について関連異分野との交流セミナーを実施している。本年度は日本化学会のコロイド界面化学討論会が筑波大学で実施されるが、そこにおいても、本研究課題に関連したシンポジウムを企画しており、コロイド界面化学においても生物資源科学の発展においても、重要な方向付けを与える場となることが期待される。
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