研究実績の概要 |
ペプチド鎖連結法:TBHPを用いた脱炭酸型ペプチド合成を検討し、水系溶媒中あるいはマイクロフローを用いることで、収率よくジペプチドが得られることを見出した。また、これらの分子変換の原料として大量供給が必要なキラルβ-アミノ-α-ケト酸等価体をN-Boc-イミンとシアノ酢酸誘導体の触媒的不斉Mannich反応により良好な選択性で得ることに成功した。 触媒的ペプチド合成:α位置換型α,β-不飽和カルボン酸のアザ-マイケル付加およびα位面選択的プロトン化を伴うN-アルコキシ-β2-アミノ酸の初の触媒的不斉合成を達成した。また、同一炭素上に二つのホウ素を持つgem-ジボロン酸触媒を新たに開発し、通常のボロン酸を遥かに凌ぐ触媒活性にてα-アミノ酸の縮合を達成した。本触媒を用いることで酸素、窒素、硫黄を含む多様な官能基化側鎖を持つオリゴペプチドの合成に成功した。 O-グリコシド化反応:グルコースのアノマー位O-アルキル化反応をガラクトースとマンノースにも展開し、さらにα-1,6-以外のα-1,3-および1,4-グリコシド誘導体の選択的合成を達成した。またO-アルキル化を1,2,6-無保護糖に応用し、α-1,6-オリゴ糖への変換にも成功した。 N-グリコシド化反応:前年度見出した2元触媒を2-O-Bn-グルコース誘導体に適用し、α-N-グリコシド体のα-選択的合成(α:β=78:22)に成功した。さらにグリカール(およびガラクタール)へのアミド導入を検討し、2-デオキシ-N-グリコシド体の合成に最適な触媒2-クロロアゾール・TfOH錯体を見出した。 天然配糖誘導体合成:ストリゴラクトン類の5員環ラクトンとブテノリドのエノールエーテル形成に有効なキラル触媒を探索し、第四級アンモニウム塩とチオウレアを合わせ持つキラル触媒がジアステレオ選択性(最高92:8)の向上に有効であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(I) ペプチド・タンパクの革新的化学合成法の開発研究 (1) 不飽和カルボン酸とRONH2の世界初の不斉アザ-マイケル反応をチオウレア・アミノボロン酸触媒により達成し、安息香酸の添加でエナンチオ選択性が劇的に向上することを発見した。N-(OH)-アスパラギン酸の触媒的不斉合成とペプチド連結法を確立し、当初の研究計画を完了させた。(2) アミド化触媒として、既存のアリールボロン酸を凌駕するgem-ジボロン酸を発見した。これにより、触媒活性の向上をはじめ固相担持触媒など実用的なペプチド合成への展開が期待できる。(3) KAHA法を凌駕するより直接的なペプチド連結法(α-ケト-β-アミノ酸と汎用性C-保護アミノ酸)を見出した。さらに、アミド化のみならず、チオアミド化やセレノアミド化にも応用できれば、多様なオリゴペプトイドの画期的な合成法に発展する可能性を秘めている。 (II) オリゴ糖・糖鎖の革新的化学合成法の開発研究 (4) 未開拓なアノマー位O-アルキル化を利用して、各種無保護糖からcis-1,n-O-グリコシドの選択的合成とオリゴ糖合成を触媒制御により達成した。現在、グルコサミンのα-O-グリコシドやα,α-1,1'-トレハロースの立体選択的な合成に取り組んでいる。(5) 2-O-Bz-グルコースと各種ペプチドからオルトアミド付加体とβ-N-グリコシドを作り分ける2つの触媒系を開発した。アミドとグリカールからβ-N-2-デオキシ糖の世界初の触媒的合成にも成功し、計画以上の研究成果を得た。特に後者の反応は企業に技術協力し実用化を目指している。(6) イネに寄生する根寄生植物の発芽を刺激するストリゴラクトン類の不斉合成に必要な(4R)-4-アルコキシブテノリドの実践的な合成法を他に先んじて確立し、(5)の手法を用い天然物や医薬品の糖鎖修飾を実践した。
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