研究課題
これまで細胞死は、不要になった細胞を生体から除去するという消極的な役割の生命現象であると認識されていた。しかし遺伝学的な細胞死操作によって、個体レベルでの細胞死機能を明らかにする研究から、細胞死はシグナル分子の発信源であるシグナルセンターとも呼べるような場を作る積極的な生体機能を果たす役割が浮かび上がってきた。本研究では、細胞死に伴って発せられるシグナル分子の発現、分泌の分子機構を明らかにし、その遺伝学的な操作、細胞生物学的な解析を通して、新たな細胞間、組織間相互作用の解明を目指す。細胞死を誘導するcaspaseが関わる能動的な分泌機構に関して研究を行った。caspase-1によるIL-1bの分泌機構を明らかにする目的で、caspase-1基質探索のためにGel-enhanced LC-MS/MS解析を導入し、幾つかの候補基質を得た。caspase-1によって直接切断される新たな基質を同定したことから個々の候補分子に関して機能解析を進めていく。化合物ライブラリーのスクリーニングによってもcaspase-1活性化プロセスに影響のある化合物を同定した。ショウジョウバエ遺伝学と生化学とを用いて、caspaseが活性化された細胞から放出される分子の同定と、その放出機構に関しての研究を進めた。また、ネクローシス細胞が引き起こす全身性の応答を制御するメカニズムに関しても遺伝学的なスクリーニングによって解析を進めた。その結果、ネクローシスが惹起する自然免疫系においてTollを介した経路が内因性因子によって活性化されることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
1. Caspase-1活性化によるパイロトーシスに伴ったIL-1βの能動的分泌: Caspase-1によるunconventional secretionの分子機構解明1-1)unconventional secretionに関わるcaspase-1基質の同定。Caspase-1の基質探索のためにGel-enhanced LC-MS/MS解析を導入し、幾つかの候補基質を得た。実際にcaspase-1の直接の基質になるかをin vitroで検証し、候補基質を絞り込んだ。1-2) caspase-1によるunconventional secretionを制御する化合物の同定。array scanを用いて3000以上の化合物をスクリーニングした。候補化合物に関して、詳しい解析を開始している。2. アポトーシス細胞からの分泌制御機構ショウジョウバエ遺伝学と生化学を用い、代償性増殖に関わるcaspase下流因子の同定をすすめている。また、アポトーシス細胞から分泌される因子の同定を目指し体液の分析も行っている。
1. Caspase-1活性化によるパイロトーシスに伴ったIL-1βの能動的分泌: Caspase-1によるunconventional secretionの分子機構解明1-1)unconventional secretionに関わるcaspase-1基質の同定。caspase-1の直接の基質をin vitroで検証し候補基質を絞り込んだ。よって、個々の分子に関して遺伝子ノックアウトを行ってIL-1βの能動的分泌への関わりを検討していく。1-2) caspase-1によるunconventional secretionを制御する化合物の同定。array scanを用いて3000以上の化合物に関して一次スクリーニングを終えた。二次スクリーニングではSCAT1を用いたFRETイメージングにより行い、三次スクリーニングでは、IL-1β分泌に関わる作用を見て最終的に目的とする化合物を同定する。2. アポトーシス細胞からの分泌制御機構caspase下流因子の同定を遺伝学的に進めていく。また、細胞死誘導、アポトーシス誘導性増殖によって細胞から分泌される因子の同定を進めていく。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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