研究実績の概要 |
免疫応答においては、自己障害を避けるために、過剰な免疫応答を制御する機構が必要である。しかし、リンパ球と異なり、樹状細胞、マクロファージ、好中球、肥満細胞などの自然免疫応答を担う免疫細胞の活性化抑制機構は充分に解明されていない。本研究では、免疫細胞の活性化を負に制御する抑制性免疫受容体による自然免疫応答の制御機構を明らかにすることを目的とした。そのため、これらの免疫受容体のリガンドを同定し、リガンドとの結合の時空間局在を解析する。また、感染、アレルギー、炎症などの疾患モデルマウスを用いて、疾患病態における抑制性免疫受容体の意義を明らかにする。これらの結果をもとに、抑制性免疫受容体を分子標的とした医薬の創出の可能性を探る。 平成28年度では、抑制性受容体CD300aの機能の解析を行い、組織特異的遺伝子欠損マウスを樹立し、解析したところ、マスト細胞のみならず、樹状細胞に対しても好中球遊走因子の産生を抑制し、腹腔内の細菌の除去が低下する結果、敗血症の病態を増悪することを明らかにした(Udayanga, et al, Int Immunol, 2016)。また、Allergin-1の機能の解析を行い、皮膚に局在するマスト細胞上に発現するAllergin-1が、黄色ブドウ球菌由来のTLR-2リガンドを認識したTLR-2を介するシグナルを抑制し、皮膚炎の病態を制御することを明らかにした(Tsurusaki, et al, Int Immunol 2016)。 また、アトピー性皮膚炎を自然発症するNc/Ngaマウスの原因遺伝子を同定し、これが新しい抑制性免疫受容体をコードすることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記の進捗状況から、研究計画の進展が順調と判断した。 1)抑制性受容体CD300aの機能の解明 敗血症は細菌などの感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害と定義される。これまでCD300aは、CLPモデルマウスを用いて、マスト細胞からの好中球遊走因子の産生を抑制し、腹腔内の細菌の除去が低下する結果、敗血症の病態を増悪することを示してきた (Nakahashi, et al. J Exp Med 2012)。今回、組織特異的遺伝子欠損マウスを樹立し、解析したところ、マスト細胞のみならず、樹状細胞に対しても好中球遊走因子の産生を抑制し、腹腔内の細菌の除去が低下する結果、敗血症の病態を増悪することを明らかにした(Udayanga, et al, Int Immunol, 2016)。
2)抑制性受容体Allergin-1の機能の解明 アトピー性皮膚炎の患者の皮膚では、しばしば黄色ブドウ球菌が繁殖し、病態との関連が指摘されている。今回、皮膚に局在するマスト細胞上に発現するAllergin-1が、黄色ブドウ球菌由来のTLR-2リガンドを認識したTLR-2を介するシグナルを抑制し、皮膚炎の病態を制御することを明らかにした(Tsurusaki, et al, Int Immunol 2016)。
|