研究実績の概要 |
免疫応答においては、自己障害を避けるために、過剰な免疫応答を制御する機構が必要である。しかし、リンパ球と異なり、樹状細胞、マクロファージ、好中球、肥満細胞などの自然免疫応答を担う免疫細胞の活性化抑制機構は充分に解明されていない。本研究では、免疫細胞の活性化を負に制御する抑制性免疫受容体による自然免疫応答の制御機構を明らかにすることを目的とした。そのため、これらの免疫受容体のリガンドを同定し、リガンドとの結合の時空間局在を解析する。また、感染、アレルギー、炎症などの疾患モデルマウスを用いて、疾患病態における抑制性免疫受容体の意義を明らかにする。これらの結果をもとに、抑制性免疫受容体を分子標的とした医薬の創出の可能性を探る。 平成29年度では、抑制性受容体CD300aの機能の解析を行い、組織特異的遺伝子欠損マウスを樹立し、解析したところ、マクロファージによる死細胞ヂン色を負に制御していること、さらにそのマクロファージ内のシグナル制御機構を明らかにした(論文準備中)。また、Allergin-1の機能の解析を行い、マスト細胞上に発現するAllergin-1が、IgE受容体を介するシグナルを抑制し、House Dust Miteによる気道収縮反応を抑制することを明らかにした(Hitomi, et al, Int Immunol, in press)。 また、アトピー性皮膚炎を自然発症するNc/Ngaマウスの原因遺伝子を同定し、これがマクロファージに発現する新しいC-type レクチン様受容体であること、ならびにそのシグナル伝達機構を明らかにした(論文準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記の進捗状況から、研究計画の進展が順調と判断した。 1)抑制性受容体CD300aの機能の解明:これまで、敗血症、炎症性腸炎、アトピー、喘息などのモデルマウスを用いて、CD300aはマスト細胞や樹状細胞などにおけるIgE受容体、TLRを介するシグナルを抑制し、これらの病態を制御することを示してきた(Nakahashi-Oda, et al. J Exp Med 2014, Nakahashi-Oda, et al. Nat Immunol, 2016)。今回、組織特異的遺伝子欠損マウスを用いて、CD300aはマクロファージによる死細胞貪食を抑制することを新たに明らかにした(論文準備中)。 2)抑制性受容体Allergin-1の機能の解明:House Dust Miteは、アトピーや喘息を誘導することが知らている主要なアレルゲンである。したがって、House Dust Miteに対する免疫応答を理解することは、アレルギー性疾患の制御において重要である。今回、マスト細胞上に発現するAllergin-1が、House Dust Mite由来のTLR-4リガンドを認識したTLR-4を介するシグナルを抑制し、喘息病態における気道収縮を制御することを明らかにした(Hitomi, et al, Int Immunol, in press)。 3)Nc/Ngaマウスの原因遺伝子同定:Nc/Ngaマウスはアトピー様皮膚炎を自然発症するマウスであり、RNAシーケンスを用いてその原因遺伝子を同定し、その機能を明らかにした。これは、House Dust Miteの成分を認識し、マクロファージの活性を抑制することを示した(論文準備中)。
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