研究課題
免疫応答においては、自己障害を避けるために、過剰な免疫応答を制御する機構が必要である。しかし、リンパ球と異なり、樹状細胞、マクロファージ、好中球、肥満細胞などの自然免疫応答を担う免疫細胞の活性化抑制機構は充分に解明されていない。本研究では、免疫細胞の活性化を負に制御する抑制性免疫受容体による自然免疫応答の制御機構を明らかにすることを目的とした。そのため、これらの免疫受容体のリガンドを同定し、リガンドとの結合の時空間局在を解析する。また、感染、アレルギー、炎症などの疾患モデルマウスを用いて、疾患病態における抑制性免疫受容体の意義を明らかにする。これらの結果をもとに、抑制性免疫受容体を分子標的とした医薬の創出の可能性を探る。令和元年度では、抑制性受容体CD300aの機能の解析を行い、CD300aがマスト細胞の脱顆粒の自己制御機能を有することを明らかにした(JACI, 2019)。また、Allergin-1の機能の解析を行い、樹状細胞上に発現するAllergin-1が、Th2応答を抑制し、House Dust Miteによる喘息病態を抑制すること, 食物アレルギーによるアナフィラキシーモデルの病態に対して, Allergi-1が抑制的に働くことを見出した (Int Immunol, 2020)。また、アトピー性皮膚炎を自然発症するNc/Ngaマウスの原因遺伝子としてClec10aを同定し、これがマクロファージに発現する新しいC-type レクチン様受容体であることと、そのリガンドがO-Glycanであることを同定した (Science Immunology, 2019)。
2: おおむね順調に進展している
下記の進捗状況から、研究計画の進展が順調と判断した。1)抑制性受容体CD300aの機能の解明:これまで、敗血症、炎症性腸炎、アトピー、喘息などのモデルマウスを用いて、CD300aはマスト細胞や樹状細胞などにおけるIgE受容体、TLRを介するシグナルを抑制し、これらの病態を制御することを示してきた(Nakahashi-Oda, et al. J Exp Med 2014, Nakahashi-Oda, et al. Nat Immunol, 2016)。今回、遺伝子欠損マウスを用いて、CD300aがマスト細胞の脱顆粒の際にPSを細胞膜上に発現することを新たに明らかにし、アレルギー反応の自己制御機構を発見した。2)抑制性受容体Allergin-1の機能の解明:今回、好塩基球に発現するAllergin-1が、食物アレルギーであるアナフィラキシーに抑制的に働くことを初めて発見した。3)Nc/Ngaマウスの原因遺伝子同定::マクロファージ上のClac10aがHouse Dust Miteの成分であるO-Glycanを認識し、マクロファージの活性を抑制することでアトピーの病態を抑制することを発見した。
1)MAIR-Iプロジェクト応募者らは、MAIR-Iがアポトーシス細胞を認識し、マクロファージによる貪食機構に関与することを明らかにした。今後、さらにこの分子機構の詳細を明らかにし、アポトーシス細胞の貪食の異常による疾患病態や、アポトーシス細胞の貪食を制御することにより、病態の制御が可能になるかなど、解析していく。2)Allergin-1プロジェクト応募者らは、Allergin-1遺伝子欠損マウスでは、 HDMにより誘導される喘息病態(気道収縮、および血清IgE抗体価の上昇や肺胞浸潤好酸球数の増加などのTh2応答)が増悪することを見出した。これらの結果から、肥満細胞に発現するAllergin-1がHDMにより誘導される気道収縮に関与する一方、樹状細胞に発現するAllergin-1がTh2応答に関与することが示唆された。本研究では、今後、Allergin-1のリガンドを同定するとともに、その生理学的、病理学的意義について解明していく。3)Nc/Ngaマウスの原因遺伝子同定同定した原因遺伝子であるClec10aとリガンドの結合様式を解明し、その結合の人為的制御によるアトピーに対する治療法の基盤開発を行う。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 2件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)
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